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アンコンシャスバイアスとは?会社組織における具体例と原因を社労士が解説

アンコンシャスバイアスとは無意識の偏見や思い込みから偏ったモノの見方をしてしまうことで、「無意識バイアス」「潜在的ステレオタイプ」とも呼ばれる事象です。会社において問題となるアンコンシャスバイアスの代表例がジェンダーバイアスであることもあり、女性活躍の観点でも注目を集めています。

この記事ではアンコンシャスバイアスの職場における具体例や発生原因、その課題と対策方法について社労士が解説します。

アンコンシャスバイアスとは?

アンコンシャスバイアスは認知バイアスともよばれ、偏見や先入観、自分の個人的体験からくる誤解や思い込みから理解・判断・思考などがゆがんでしまうことを言います。

アンコンシャスバイアスの最大の特徴は、そのバイアスが無意識から生じるものであるということです。
無意識を意識するためには「自分にはアンコンシャスバイアスがある」と自覚する必要があり、そのために定期的・意識的なトレーニングが必要です。

アンコンシャスバイアスが生じること自体は致し方ないことでもあり、善悪の問題で語るべきものではありません。
しかし、それによって会社内の人間関係に悪い影響が生じたり、企業のCMや役員の言動によって企業価値が毀損する可能性があることから、近年は重要な課題として認知されています。

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企業におけるアンコンシャスバイアスの具体例

会社において、アンコンシャスバイアスは様々な場面で生じ得ます。例えば、下記のような言説はアンコンシャスバイアスの具体例と言えるでしょう。

これらに共通するのは、過度な一般化が働いていたり、根拠のない判断が無意識に行われているというところです。しかし、そのような印象を持つことや思考に至る過程がすべて無意識下にあるために、気が付きにくく対策しにくいところがアンコンシャスバイアスの難しさです。

<採用の場面におけるアンコンシャスバイアスの例>

 ・男性と女性なら、男性のほうを採用するべきだ
 ・自分の出身高校と同じ学校の卒業生は信用できる
 ・海外大学卒と国内大学卒なら、海外大卒のほうが優秀だ
 ・前職の給与が高いほうが仕事ができる

<処遇・職場での場面におけるアンコンシャスバイアスの例>

 ・子どものいる女性は出張を伴うような業務に就かせるべきではない
 ・家庭を持った男性は家計の主たる担い手であるべきだ
 ・受付や案内は女性のほうがふさわしい
 ・女性らしい感性を発揮して仕事をしてほしい
 ・同程度の評価であれば男性を先に昇進させたほうがスムーズになる
 ・自分に笑いかけてくれる相手は自分に対して好意がある
 ・相手のためを思えばこそ厳しく接することは必要だ

<職場におけるそのほかの場面のアンコンシャスバイアスの例>

 ・ゆとり世代は仕事に対して無責任だ
 ・若者は全員ITに詳しい
 ・年配の社員は生産性に欠ける

代表的なアンコンシャスバイアス

会社において問題となりやすいアンコンシャスバイアスには次のようなものがあります。

①ジェンダーバイアス

ジェンダーバイアスとは男女の役割に無意識に固定的な観念を持つことや、そのために社会的な評価や扱いが差別的になることを指す言葉です。
「男性らしい」「女性らしい」といった性別を背景として個人に期待する言動を強制することが代表的な表れの例です。

会社においてジェンダーバイアスが特に問題となるのは、このバイアスに対し無自覚であることでセクシャルハラスメントに発展する可能性が高いことや、企業の発するメッセ―ジがフェミニズムの観点から問題視されるような場合があるからです。
また、男性は全国転勤を課す一方女性は地域を限定して仕事をさせるなど、会社が本人の意向とは関係なく性別を理由に強制的に仕事を割り振る場合はキャリア形成・賃金格差に繋がります。

こうした問題が多いことから、アンコンシャスバイアスの中でもジェンダーバイアスに対する目配りはもはや必須であると言えるでしょう。

➁内集団バイアスと現状維持バイアス

内集団バイアスとは、自分が接している/接していた集団はひいきしてしまう、良く見えてしまうというバイアスです。このバイアスがあると、傷があっても良く見えたり、その傷の理由を自分で正当化して納得してしまったりします。
また、「うちの会社らしさ」を追求する過程では一つの価値観でまとまるほうが内集団バイアスが効きやすくなるため、多様性を排除しがちです。そればかりか、違う意見を表明した同僚を敵視してしまい、「内集団」から阻害することにもつながる可能性があるのです。

更に、現状維持バイアスがこの正当化に拍車をかけることになります。

現状維持バイアスとは新しい価値観、考え方を受け入れることに抵抗を感じる心理状態のことです。
「うちの会社らしさ」がいったん固定化してしまうと、より効率的な仕事の方法が見つかったり、新しい価値感を取り入れなければならない局面においても「今、この状態」を正当化し、維持したいという心理が働きます。

こうした状況では多様性は育まれず、社員一人一人の能力を活かすことは難しくなります。

➂エコーチェンバー現象と確証バイアス

エコーチェンバー現象とは、価値観の似た者同士で交流を続けることで、特定の意見や思想が増幅されてしまう現象のことです。➁の内集団バイアスもこのエコーチェンバー現象をより強めてしまう要素のひとつです。

たとえば、「うちの会社って○○らしい」と言い合っている間に、それに疑問を持つ社員が声を上げずに退職してしまうという事象がありますが、それはこのエコーチェンバー現象が社内に働いてしまい、違う価値観が受容されなくなることを社員自身が察しているからなのです。

また、確証バイアスと言って、自分が正しいと思いたいことはその情報の正しさを補強する情報を集めてしまう心理もあります。これもまたアンコンシャスバイアスのひとつであり、自分で「鳥は飛ぶもの」という「正しいと思いたいこと」があったときに、「鳩は飛ぶ、インコは飛ぶ、雀は飛ぶ」という情報ばかりに眼がいき、例外である「鶏は飛ばない、ペンギンは飛ばない」という情報を黙殺してしまうということが起こるのです。

このような状態が継続すると、組織として致命的な欠陥があっても気が付かなくなったり、イノベーションを阻害する風土が生まれてしまうことになります。

アンコンシャスバイアスが生じる原因

①人は自分の好きな人の言うことを正しいと思いたい心理を持つ

アンコンシャスバイアスが生じる原因の根本的な原因のひとつに、「自分が人は自分の好きな人、尊敬する人、権威ある人、認められたい人の言うことを正しい、よいことだと思いたい」という気持ちが働くということが挙げられます。

例えば、子ども時代に効率よく勉強していたことを親に褒められる経験をした人は、「効率の良さ」は良いことという価値観を持ちます。しかし、勉強時間の長さを褒められた人は「時間をかけること」が良いことであるという価値観を持つようになります。

この価値観それ自体はどちらが良い、悪いという善悪の対象にすべきものではありません。しかし、会社においては効率よく働くことが求められているために、後者が「時間をかけることが美徳ではない」ということを受け入れるのは心理的抵抗が働きます。

また、前者にしても「自分が正しい」というバイアスを強化してしまうために、自分と違う後者に対し「効率が悪い」と評価してしまい、後者が人として「劣っている」と思う可能性が出てきます。

このようにアンコンシャスバイアスは人権の観点からも注意すべき課題といえます。

➁人には自己防衛機能があり、自分のおかれた状況に重ねて物事を判断する

また、アンコンシャスバイアスは、自己防衛心によっても生じてきます。
自分の価値観が絶対ではない、ということを頭では理解していても、腹落ちするのは本当に難しいことです。提示された意見が自分の価値観を否定するようなものだった場合、自分のこころを守るために、その意見をゆがめて受け取ったり、無視してしまったりすることがあります。

さらに、人は何かを判断するときに自分にひきつけて判断します。
例えば「今仕事が忙しくて」と言われたとき、自分も忙しくて大変だという想いを持つ人であれば「大変だね」と相槌をうつでしょうし、自分自身は仕事を干されてしまって苦しい想いをしている人は自慢されているように思うでしょう。

このように、アンコンシャスバイアスは自分の価値観や体験に引き付けてあらわれてくることもあります。

③ヒューリスティックによる意思決定

論理的なプロセスを経ずに、直観的あるいは簡便的にものごとを判断することを、ヒューリスティックによる意思決定と言います。これは短期間で物事を判断することができるので非常に脳にとってストレスの少ない方法です。

この意思決定の方法の一つに代表的ヒューリスティックという方法があります。これは判断の対象となる物事に特徴的、代表的な因子を定義し、その定義に当てはまるものを判断していくという意思決定のありかたです。血液型占いは代表的ヒューリスティックの典型例で、「A型の人はしっかりしている」というように大きな枠組みで個別具体的な事象を判断します。

しかし、このような意思決定は例外に眼を向けにくくなります。先の血液型の例ですと、「他の血液型でもしっかりしている人はいる」ことに気が付きにくくなります。

アンコンシャスバイアスについて知るメリット

アンコンシャスバイアスについて知ることは、組織において下記のようなメリットがあります。

①ハラスメント対策になる

会社におけるセクシャル・ハラスメントやパワー・ハラスメント、マタニティ(パタニティ)・ハラスメントは従業員の定着率を押し下げる大きな原因になります。
ハラスメントが恒常化するのは、加害者側が無意識にそのような言動を行っていることが多いものです。
そのため、ハラスメント予防としてもアンコンシャスバイアスを知ることは大きな効果が見込めます。

➁従業員の職場定着率が向上する

アンコンシャスバイアスのすくない職場では、自分を決めつけられる体験が減るために、従業員ひとりひとりが受容されているという感覚を持ちやすくなります。また、多様性が認められるために、一人一人が異なる能力を保有しても発揮しやすい環境が整います。
したがって、アンコンシャスバイアスを知ることで職場に対するエンゲージメントが向上し、定着率が向上します。

③企業価値が向上する

アンコンシャスバイアスに注意が払われた会社では、外部に対する情報発信が原因で炎上するリスクが低減します。昨今はフェミニズムやジェンダーについて消費者の問題意識も高くいため、高額な費用をかけた広告物でブランドイメージを毀損することのないよう十分な配慮が必要です。

アンコンシャスバイアスを知るために研修を活用しよう

アンコンシャスバイアスは無意識に生じるものですので、まずはアンコンシャスバイアスを知ることがスタートになります。
当事務所ではアンコンシャスバイアス研修を実施しています。
ハラスメント対策講座に盛り込む、女性活躍推進のプログラムに取り入れるなど貴社のニーズに合ったご提供が可能ですので、ぜひ一度ご相談ください。


企業向け研修についてはこちらから

【レジュメ画像あり】アンコンシャスバイアス研修 プログラム例

【レジュメ画像あり】ハラスメント研修  プログラム例

この記事を書いた人

村井 真子Murai Masako

社会保険労務士/キャリアコンサルタント。総合士業事務所で経験を積み、愛知県豊橋市にて2014年に独立開業。中小企業庁、労働局、年金事務所などでの行政協力業務を経験し、あいち産業振興機構外部専門家を務めた。地方中小企業における企業理念を人事育成に落とし込んだ人事評価制度の構築・組織設計が強み。

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