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【2026年社会保険・労働保険法改正】中小企業が取るべき対応を社労士が解説

【2026年社会保険・労働保険法改正】中小企業が取るべき対応を社労士が解説

近年は「社会の変化に合わせて法律が変わる」流れが強まっており、2026年の労働・社会保険改正はその象徴といえます。本記事では、改正内容に加え、その背景や企業に求められる対応、実務上のポイントを社労士が整理します。

2026年法改正の本質は「企業責任の拡張」

今回の法改正は多岐にわたります。
大きなところでは子ども・子育て支援法制度開始や男女間の賃金差異・女性管理職比率の公表、カスタマーハラスメント・求職者等に対するセクシュアルハラスメントへの防止のための対応義務化などがあげられますが、これらの法改正に共通しているのは、企業に求められる責任の範囲が広がっていることです。

企業の責任は多岐にわたりますが、近年の傾向として「働きやすい環境を整える」「多様な人材を受け入れ、活躍できる場を作る」「職場における心理的安全性を確保する」といった対応がより求められる傾向にあります。

今回の法改正はこの流れを汲むものであり、企業責任が拡張されていることを理解することが法改正対応の前提になります。

【2026年法改正①】子育て支援金の導入

2026年4月から、新たに「子ども・子育て支援金制度」が導入されます。
これは少子化対策の財源確保を目的とした制度で、社会保険料と一体で徴収され、企業・労働者双方が負担する仕組みです。
導入年度は一律0.23%が徴収されます。

背景には、急速に進む少子化と、それに伴う労働人口の減少や社会保障制度の維持への懸念があります。
こうした課題に対応するため、政府は児童手当の拡充や育児支援施策を進めており、その安定財源として本制度が創設されました。

企業実務においては、
・社会保険料の増加
・給与計算への影響(控除額変更・システム設定)
・従業員への説明対応
などが必要となります。

制度開始時の負担は大きくありませんが、将来的な引き上げも予定されており、企業にとっては人件費増加、従業員にとっては手取り減少の要因となる点に注意が必要です。

子ども・子育て支援金制度の詳細や実務対応については、こちらの記事で詳しく解説しています。


【2026年法改正②】男女賃金差異・女性管理職比率の公表義務拡大

2026年の法改正では、男女賃金差異の公表義務が拡大されます。
これまでは常時301人以上の企業が対象でしたが、今後は101人以上の企業にも対象が広がります
また、女性管理職比率についても同様に101人以上の企業に公表が義務化されます。
この改正の背景には、女性活躍推進やダイバーシティの観点に加え、企業の情報開示に対する社会的要請の高まりがあります。近年では、投資家や求職者が企業を評価する際に、賃金差異や女性管理職比率といった指標を重視する傾向が強まっており、「説明できる企業かどうか」が問われる時代になっています。

企業実務においては、
・男女別の賃金データの把握・集計
・賃金差異の要因分析
・公表内容の整理・説明対応
などが必要になります。

単に数値を公表するだけでなく、「なぜ差が生じているのか」を説明できる状態にしておくことが重要です。特に中小企業においては、制度対応が後手に回りやすいため、早めの準備が求められます。

【2026年法改正③】高齢者雇用と安全配慮の努力義務化

2026年4月から、高齢者雇用に関する環境整備が一層重要になります。

在職老齢年金の見直しにより、報酬と年金の両方を受ける労働者について一定の収入(老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額が65万円/※令和8年度価額)に達するまでは年金が減額されなくなり、高齢者が働き続けやすい制度へと変わります。
その一方で、企業には高年齢労働者の労働災害防止に向けた配慮が努力義務として求められるようになります。具体的には、転倒防止や作業負荷の軽減など、安全に働ける環境づくりが重要視されます。

この改正の背景には、少子高齢化による人手不足の深刻化があります。
高齢者を労働力として活用していくことが前提となる中で、単に雇用するだけでなく、安心して働き続けられる環境を整備することが企業の責任として求められるようになっています。

企業実務においては、
・高齢者の業務内容や配置の見直し
・作業環境の安全対策(転倒防止・負荷軽減など)
・健康状態への配慮や定期的なフォロー
などが必要になります。

特に、高齢者は経験豊富な戦力である一方、身体機能の変化によるリスクも抱えています。そのため「雇用すること」だけでなく、「安全に働ける状態を設計すること」が重要です。

【2026年法改正④】健康保険被扶養者認定の年間算定対象見直し

2026年4月から、健康保険の被扶養者認定における収入判定の取扱いが見直されます。

これまで被扶養者の認定は、時間外労働手当などを含めたすべての収入をもとに判断されていましたが、今後は労働契約上あらかじめ見込まれない一時的な収入(残業代など)は算定対象に含めない取扱いとなります。
この改正の背景には、短時間労働者の増加や働き方の多様化により、収入把握が複雑化していることがあります。加えて、「年収の壁」を意識した就業調整を緩和し、より柔軟に働ける環境を整備する狙いもあります。

企業実務においては、
・労働条件通知書・雇用契約書の記載内容の明確化
・扶養判定に関する従業員からの相談対応
・労働条件変更時の手続き・書類管理の徹底
などが必要になります。

特に今後は、「どの収入が算定対象となるのか」を適切に説明できることが重要となり、人事担当者の判断や対応力が問われる場面が増えることが想定されます。
健康保険の被扶養者認定の見直しや年収の壁への影響、具体的な実務対応については、こちらの記事で詳しく解説しています。

【2026年法改正⑤】治療と就業の両立支援の努力義務化

2026年4月から、改正労働施策総合推進法により、病気を抱える労働者の「治療と就業の両立支援」が事業主の努力義務となります。

これまで企業の対応は任意に近いものでしたが、今後は職場として、治療を受けながら働く従業員を支える体制づくりが求められるようになります。
この改正の背景には、がんなどの疾病を抱えながら働く人の増加があります。高齢者の就労拡大もあり、今後はどの企業においても「治療と仕事の両立」は身近な課題となっていきます。一方で、職場の理解や支援体制が不十分なために、就業継続を断念してしまうケースも少なくありません。

こうした状況を踏まえ、企業には単に雇用を維持するだけでなく、安心して働き続けられる環境を整備する責任が求められるようになっています。

企業実務においては、
・相談窓口の整備や社内体制の構築
・休暇制度や柔軟な勤務制度(時短勤務・テレワーク等)の整備
・主治医や産業医と連携した就業配慮や支援プランの作成
などが必要になります。

特に重要なのは、本人の申出を前提に、医療機関と連携しながら個別に対応していく点です。企業が一方的に判断するのではなく、労働者本人との対話を重ねながら就業継続の可否や働き方を決定していくことが求められます。
この取組は単なる福利厚生ではなく、人材の定着や生産性向上にもつながるものです。今後は「治療しながら働ける会社かどうか」が、企業選択の基準の一つになっていく可能性もあります。

【2026年法改正⑥】障害者雇用率の引き上げ

2026年7月から、民間企業の法定障害者雇用率が2.7%へ引き上げられます。
これにより、従業員数37名以上の企業では、障害者雇用の確保が求められることになります。

この改正の背景には、障害のある方の就労機会の確保と、社会全体で支え合う「共生社会」の実現があります。近年、障害者雇用は着実に進展しているものの、依然として安定した就労機会の確保や職場定着には課題が残っており、法制度による後押しが継続的に行われています。
また、2016年の法改正で精神障害者も雇用義務の対象に含まれたことにより、企業にはより多様な障害特性への理解と対応が求められるようになっています。

企業実務においては、
・自社の実雇用率の把握と不足人数の確認
・採用計画の見直し(中長期的な人員戦略)
・配属・業務設計の工夫(ミスマッチ防止)
・合理的配慮の提供(勤務時間・環境整備など)
などが必要になります。

特に重要なのは、「人数を満たすこと」だけでなく、定着を前提とした雇用設計です。障害特性に応じた業務の切り出しや職場環境の整備は、結果として業務効率の見直しや組織全体の働きやすさにもつながります。
障害者雇用は単なる義務ではなく、人材不足の解消や組織の多様性向上といった側面からも、企業にとって重要な経営課題となっています。

【2026年法改正⑦】カスタマーハラスメントの法制化

2026年10月より、カスタマーハラスメント(いわゆるカスハラ)への対策について、事業主に雇用管理上必要な措置を講じることが義務化されます。

カスタマーハラスメントとは、
・顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行う
・社会通念上許容される範囲を超えた言動により
・労働者の就業環境を害すること
と定義されます。

この改正の背景には、クレームの過激化や長時間拘束、暴言・威圧的対応などにより、従業員の精神的負担が増大している現状があります。
こうした状況が離職やメンタル不調の原因となり、企業経営にも影響を及ぼしていることから、制度的な対応が求められるようになりました。

企業実務においては、
・カスハラ対応方針の明確化と周知
・相談窓口の整備
・発生時の対応フローの整備(記録・エスカレーション等)
などが必要になります。

特に重要なのは、「顧客だから我慢する」という対応から脱却し、従業員を守るためのルールを企業として持つことです。今後は、顧客対応も含めた労務管理が求められる時代になります。

【2026年法改正⑧】就活セクハラ対策の義務化

2026年10月より求職者(学生やインターンシップ参加者等)に対するセクシュアルハラスメント、いわゆる「就活セクハラ」についても、企業に防止措置を講じる義務が課されます。
これまでセクハラ対策は「雇用している労働者」が対象でしたが、今回の改正により、採用活動の段階における言動も対象となります。

この改正の背景には、
・面接やOB訪問を利用した不適切な言動
・力関係を利用した性的要求
・密室での面談など不透明な採用プロセス
といった問題の顕在化があります。

企業実務においては、
・面談・面接ルールの明確化(複数人対応、場所の限定など)
・求職者向けの相談窓口の整備
・発生時の迅速な対応(事実確認・謝罪等)
などが必要になります。

特に重要なのは、採用活動も企業の「職場の延長」であるという認識です。採用段階での対応は企業イメージにも直結するため、ハラスメント対策の対象として位置づけることが求められます。

【2026年法改正⑨】国年第1号被保険者の育児期間に関する保険料免除

2026年10月から、国民年金第1号被保険者(自営業者・フリーランス・無職の方など)を対象に、育児期間中の国民年金保険料が免除される制度が新たに創設されます。

対象となるのは、子ども(実子・養子)が1歳になるまでの期間で、父母双方が申請により保険料免除を受けることができます。さらに、この免除期間は単なる未納扱いではなく、将来の年金額において「納付した場合と同様に反映される」点が大きな特徴です。
この制度の背景には、これまで育児休業給付などの対象外であった自営業者やフリーランスに対する支援の不足があります。会社員の場合は育児休業中の社会保険料免除や給付制度がありますが、第1号被保険者には同様の仕組みが十分ではありませんでした。
そのため、「こども未来戦略」などの政策の中で、働き方にかかわらず子育て期の経済的負担を軽減する必要性が指摘され、本制度の創設に至っています。

企業実務への直接的な影響は限定的ですが、
・フリーランスや副業人材との関係性の変化
・多様な働き方を前提とした制度理解の必要性
・従業員からの制度に関する問い合わせ対応
といった形で、人事労務担当者にも間接的な影響が及びます。

また今後は、雇用か非雇用かを問わず、「すべての働く人を前提とした制度設計」が進んでいくことが予想されます。その意味でも、本制度は従来の雇用中心の社会保障からの転換を示す象徴的な改正といえるでしょう。

【2026年法改正⑩】短時間労働者への社保加入負担減(事業主向け施策)

2026年10月より、短時間労働者(パート・アルバイト等)の社会保険適用拡大にあわせて、事業主が負担する保険料に対する支援措置が導入されます。

この改正の大きな特徴は、適用拡大に伴う負担増に対し、3年間の時限的な軽減措置が設けられている点です。
具体的には、短時間労働者の社会保険加入により本来は「労使折半(50%)」となる保険料負担について、以下のように労働者負担を段階的に軽減することが可能となります。

・月収 約8.8万円(年収約106万円相当)
 → 労働者負担:50% → 25%に軽減
・月収 約9.8万円
 → 労働者負担:50% → 30%に軽減
・月収 約10.4万円
 → 労働者負担:50% → 36%に軽減
・月収 約11万円
 → 労働者負担:50% → 41%に軽減
・月収 約11.8万円
 → 労働者負担:50% → 45%に軽減
・月収 約12.6万円
 → 労働者負担:50% → 48%に軽減

※3年目は軽減割合が縮小され、最終的には通常の労使折半(50%)に戻ります。

この仕組みでは、企業が一時的に労使折半を超えて保険料を負担し、その超過分について国が支援する形となります。
背景にあるのは、「年収の壁」による就業調整です。
短時間労働者が社会保険に加入すると、保険料負担が発生し手取りが減るため、結果として労働時間を抑えるという行動が広く見られてきました。
今回の措置は、この手取り減少を緩和することで、「働き控え」を防ぎ、労働参加を促すことを目的としています。

企業実務においては、

・社会保険適用拡大に伴う対象者の把握
・保険料負担のシミュレーション
・労働時間・賃金設計の見直し

などが必要になります。

【2026年法改正⑪】現物給与の価額改定の変更

2026年の法改正では、給与の一部として支給される「現物給与(食事・住宅等)」の評価額が見直されます。

今回の改定は2段階で実施される点が重要です。

・2026年4月1日から:食事の現物給与価額を改定
・2026年10月1日から:住宅の現物給与価額を改定(算定方法も変更)

現物給与とは、

・社宅・寮の提供
・食事の支給
・自社製品の支給

など、金銭以外で支払われる給与のことを指します。
これらは社会保険料の算定において「報酬」として扱われるため、適正な評価額の設定が必要となります。

今回の改正では、下記のような変更が行われます。

・食事:全国一律で評価額を見直し (例:1人1日あたり約850円/都道府県により差あり)
・住宅:「畳単位」から「㎡単位」へ算定方法を変更(より実態に即した評価へ移行)

この改正の背景には、住宅事情の変化(洋室中心・面積基準への移行)や物価上昇による食事コストの変動など、実態との乖離の是正をする意図があります。
つまり今回の改正は、実の生活コストに合わせた評価へ見直すものといえます。

企業実務においては、以下の点に注意が必要です。

・給与計算への反映(4月・10月で2回対応)
・社宅・食事提供の評価額の見直し
・標準報酬月額への影響確認

特に重要なのは、この変更が「固定的賃金の変動」に該当する可能性がある点です。
この場合、被保険者報酬月額変更届(随時改定)の対象となる可能性があるため、見落としには注意が必要です。

【2026年法改正⑫】同一労働同一賃金ガイドラインの見直し

2026年10月から同一労働同一賃金ガイドラインの内容が拡充され、新たに「退職手当」や「家族手当」「住宅手当」などの考え方が追加される予定です。

これまでガイドラインでは、基本給や賞与などが中心でしたが、実務上問題となりやすかった各種手当や退職金については、明確な基準が十分に示されていませんでした。
変更の背景には、同一労働同一賃金の施行(2020年)から約5年が経過し、非正規雇用の待遇改善は一定進んだものの、依然として賃金格差が残っているという実態があります。

さらに、

・退職金
・家族手当
・各種手当

といった待遇差について、最高裁判例が積み重なり、判断基準の整理が必要になってきたことも大きな要因です。
つまり今回の見直しは、「実務で迷いやすい部分を明確化する」改正といえます。

今回の見直しでは、特に以下の点が重要です。

① 退職手当がガイドラインに明記される
退職手当について、「労務の後払い」「功労報償」といった性質・目的を踏まえ、同様の目的がある場合には非正規にも均衡ある支給が求められる可能性があることが明示される見込みです。
② 各種手当の考え方が明確化される
実務上争点となりやすい「家族手当」「住宅手当」などの取扱いの差についても、「目的・性質に照らして合理性があるか」で判断することが整理されています。
③ 雇入れ時の説明義務の強化
さらに、雇入れ時の労働条件明示事項として正規・非正規間の待遇差の内容・理由について「労働者が説明を求められる」ことが明記される方向となっています。

企業実務においては、

・正社員と非正規の待遇差の棚卸し
・各手当・退職金の「目的」の整理
・説明できる状態の構築

が必要になります。
特に重要なのは、 「合理的理由で違いを説明できるかどうか」です。

今回の見直しでは明確に、

・正社員の待遇を下げて調整するのではなく
・非正規の待遇改善で対応する

ことが求められています。
つまり、コストを抑えるための調整ではなく、構造の見直しが必要になるという点がポイントです。

まとめ|法改正は「社会の変化の結果」である

2026年の法改正は、制度の変更というよりも、社会の変化を企業に反映させるものです。

・働き方が変わる
・人材構成が変わる
・価値観が変わる

その結果として、法律が変わっています。

だからこそ重要なのは、制度を追いかけることではなく、変化の方向性を理解することです。
そしてその方向性は明確に「人を守る企業が選ばれる時代」に向かっているといえます。

一方で、実務の現場では 「何から対応すればよいのか分からない」 「制度は理解したが自社への落とし込みが難しい」 といった声も少なくありません。
法改正は“知っているだけ”では不十分で、 自社の制度・運用に落とし込めてはじめてリスク対策になります。

村井社会保険労務士事務所では、

・法改正への具体的な対応整理
・就業規則や社内制度の見直し
・ハラスメント対策や人事制度設計

など、企業の実情に合わせた実務支援を行っています。
「自社は何から対応すべきか整理したい」 「法改正を機に制度を見直したい」 とお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。










この記事を書いた人

村井 真子Murai Masako

社会保険労務士/キャリアコンサルタント。総合士業事務所で経験を積み、愛知県豊橋市にて2014年に独立開業。中小企業庁、労働局、年金事務所などでの行政協力業務を経験し、あいち産業振興機構外部専門家を務めた。地方中小企業における企業理念を人事育成に落とし込んだ人事評価制度の構築・組織設計が強み。

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