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【2026年4月】健康保険の被扶養者認定 ― 年収の考え方が変わります

【2026年4月】健康保険の被扶養者認定 ― 年収の考え方が変わります

健康保険の被扶養者認定について、算定対象となる収入の範囲が変わります。2026年4月以降は、労働契約に明確な規定がなく、契約締結段階では見込むことが難しい収入(時間外労働に係る賃金など)については、被扶養者の認定における年間収入に含めないこととなりましたので、分かりやすく解説いたします。

1) 被扶養者資格の再確認の目的

協会けんぽでは、保険給付の適正化を目的として、健康保険の被扶養者となっている方が、現在もその状況にあるかを確認するために、毎年度、被扶養者資格の再確認を実施しています。
今回、見直されることとなった背景には、近年、短時間労働者の増加・就業形態の多様化により収入把握が複雑化していることと、被扶養者認定の予見可能性を高めることで、認定対象者の就業調整を回避する目的があります。

2) 健康保険の「被扶養者」とは

健康保険では、被保険者が病気になったり、けがをしたときや亡くなった場合、または、出産した場合に保険給付が行われますが、その被扶養者についての病気・けが・死亡・出産についても保険給付が行われます。この保険給付が行われる被扶養者の範囲は次のとおりです。

被扶養者の範囲

1.被保険者の直系尊属、配偶者(事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、兄弟姉妹で、主として被保険者に生計を維持されている人
※これらの方は、必ずしも同居している必要はありません。

2.被保険者と同一の世帯で主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人
※「同一の世帯」とは、同居して家計を共にしている状態をいいます。
① 被保険者の三親等以内の親族(1.に該当する人を除く)
② 被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
③ ②の配偶者が亡くなった後における父母および子
※ただし、後期高齢者医療制度の被保険者等である人は、除きます。

収入の基準

健康保険では、被保険者の一定範囲の家族について、被扶養者としての認定を受けることができます。被扶養者の認定が受けられる要件に年間収入の基準があります。
• 原則:認定対象者の年収130万円未満
• 例外:
o 60歳以上または一定の障害がある方 → 180万円未満
o 19歳以上23歳未満(配偶者を除く)→ 150万円未満
• さらに「被保険者の年収の2分の1未満」であることが必要
年齢は、扶養認定日が属する年の12月31日時点の年齢で判定します。

3) 2026年4月1日以降の変更ポイント

これまでは認定対象者の「過去の収入、現時点の収入または将来の収入の見込みなどから、今後1年間の収入の見込みによって判定されており、時間外労働に係る割増賃金等を含む、あらゆる収入が対象となっていましたが、2026年4月以降は、労働契約に明確な規定がなく、契約締結段階では見込むことが難しい収入(時間外労働に係る賃金など)については、被扶養者の認定における年間収入に含めないこととなりました
当初は想定されなかった時間外労働の賃金などにより、結果的に年間収入が基準額以上になった場合であっても、その収入が社会通念上妥当な範囲に留まる場合には、これを理由として、被扶養者としての取扱いが変更されないこことなります。

この際、労働条件通知書等の労働契約の内容が分かる書類を添付した上で、認定対象者に「給与収入のみである」旨の申立てを行うことにより、その内容が確認されます。さらに、労働条件に変更があったときには、変更後の内容に基づき被扶養者に係る確認を実施し、労働条件変更の都度、労働条件の内容が分かる書面等の提出が求められることになります。

4) 2年猶予の特例

現在、被扶養者の方が、年収130万円を超えた場合には、配偶者の社会保険の扶養から外れ、自身で国民年金・国民健康保険に加入するか、勤務先の社会保険に加入する必要があります。
しかし2023年10月から開始された特例措置により、繁忙期による残業や一時的な業務量の増加などで年収が130万円を超えた場合、事業主がその理由が「一時的な収入変動」であることを証明すれば、引き続き扶養認定が受けられます。
『事業主の証明による被扶養者認定の円滑化』によって、被扶養者の収入確認時に一時的収入増である旨の事業主証明を添付することで、保険者の認定を円滑にする仕組みです。

恒常的に基準を超える見込みの人は対象外で、この特例は最大で連続2年間適用されます。これは恒久的な対応ではなく、2025年の年金制度改正までの「つなぎ措置」として導入されましたが、後に恒久的な対応に切り替えられています。
連続した2年間については、収入が一時的に増加し年収130万円以上となっても扶養のままとすることができます。

5) 扶養される人の年収によって扶養が決まる「年収の壁」

厚生年金保険及び健康保険においては、会社員の配偶者等で一定の収入がない方は、被扶養者(第3号被保険者)として、社会保険料の負担が発生しません。
こうした方の収入が増加して一定の収入を超えると、社会保険料の負担が発生し、その分手取り収入が減少するため、これを回避する目的で就業調整する方がいらっしゃいます。
その収入基準がいわゆる「年収の壁」と呼ばれています。
社会保険の「年収の壁」は、年収106万円と年収130万円の2つあります。この違いは、勤務する企業の規模によって異なります。従業員が51人以上の企業に勤めている場合には年収106万円、それ以外であれば年収130万円とされています。

従業員が51人以上の企業の場合

下記に該当する場合は、年収106万円を超えたら勤務先で社会保険に加入します
① 収入が88,000円/月以上
② 2か月超の雇用が見込まれる
③ 所定労働時間が週20時間以上
④ 学生ではない
※年収を算定するにあたっては、通勤手当は含みません

現在、社会保険の加入対象となるパート・アルバイト従業員は「従業員数51人以上の企業に勤務している」ことが一つの要件となっています。この企業規模要件について、2027年10月1日から2035年10月1日までの間に段階的に撤廃されることが決まっています。

6) 事業主・人事担当者が注意すべきポイント

今回の被扶養者認定の見直しは、従業員本人だけでなく、事業主や人事担当者の実務対応にも影響します。特に次の点には注意が必要です。

労働条件通知書・雇用契約書の重要性が高まります

2026年4月以降は、「労働契約に明確な規定がある収入かどうか」が被扶養者認定の判断材料となります。
時間外労働や手当の取扱いが曖昧なままでは、被扶養者認定時に確認や追加書類の提出を求められる可能性があります。
労働条件通知書や雇用契約書の記載内容が、これまで以上に重要になります。

扶養に関する相談対応が増える可能性があります

制度改正により、「扶養から外れますか?」「この働き方は大丈夫ですか?」といった相談が、従業員から事業主・人事担当者へ寄せられることが想定されます。
誤った説明をしてしまうと、後に社会保険の加入・脱退のトラブルにつながるおそれもあります。

労働条件変更時の手続き漏れに注意が必要です

労働条件に変更があった場合、その都度、被扶養者認定の確認が行われ、書面提出が求められます。
勤務時間や賃金を変更したにもかかわらず、扶養の取扱いを見直していなかった、というケースには注意が必要です。

「年収の壁」対策は今後さらに重要になります

企業規模要件の段階的撤廃により、社会保険の加入対象者は今後も拡大していきます。
目先の対応だけでなく、中長期的な人員配置・働き方の設計が求められる時代になっています。

7) 当事務所からのご案内

被扶養者認定や「年収の壁」に関する制度は、毎年のように見直しが行われており、「知らなかった」「対応が遅れた」ことがリスクになる分野です。

当事務所では、
• 労働条件通知書・雇用契約書の整備・見直し
• 扶養・社会保険に関する従業員対応の整理
• 年収の壁を踏まえた働き方・制度設計のご相談
• 社会保険の加入・喪失手続きのサポート
など、事業主様・人事担当者様の実務に即した支援を行っています。

「このケースは扶養に入れるのか判断が難しい」
「従業員への説明に自信がない」
「制度改正を踏まえて就業規則や契約書を見直したい」

このようなお悩みがありましたら、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。
制度を正しく理解し、安心して働ける職場づくりを、社会保険労務士としてしっかりサポートいたします。









この記事を書いた人

太田裕子Yuko Ohta

社会保険労務士。助成金を活用しながら、女性活躍支援・生産性向上等の働き方改革のサポートが強み。安心安全な環境づくりで働く人の最高のパフォーマンスを引き出し、組織の業績を上げていく状態に導きます。

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