働きながら家族の介護を担う「ビジネスケアラー」は、今後確実に増えていくと考えられています。介護は見えにくく、開始時期や進み方が個々人で大きく異なるため、企業が気づいたときには従業員が限界直前ということも珍しくありません。特に40代以降の従業員にとっては、仕事の責任増大と家族のケア負担が重なる時期でもあり、企業としての対応がますます求められています。本記事では、人事労務担当者が押さえるべき知識と実務対応について、社労士の視点から詳しく解説します。
1) ビジネスケアラーは確実に増える――介護は“誰にでも起こる”

近年、「ビジネスケアラー」という言葉が、人事や経営の領域で静かに浸透し始めています。働きながら家族の介護を担う従業員のことであり、子育て支援やダイバーシティ推進と同様、企業にとって欠かすことのできないテーマになりつつあります。
介護の特徴の一つは、その“始まりが見えにくい”という点にあります。ドラマのように突然介護が始まる場合もありますが、むしろ現実には、「気づいたら日常の多くの時間が介護に取られていた」というケースのほうが多いのです。親が軽い転倒をした、病院の付き添いが増えた、認知症の初期症状に気がついた、家族の通院が頻度を増している……。こうした小さな変化が徐々に負担として積み重なり、その間、本人は「まだ介護のうちには入らない」と思い込んでしまう。こうして相談のタイミングがどんどん遅れ、本格的に支援が必要になったときにはすでに心身が消耗しているという現実が多くの職場で起きています。
もちろん、急激に生活が一変するケースも存在します。親の転倒や脳疾患による突然の入院、認知症の症状が急に進行すること、配偶者の病気が悪化すること、障害のある子どもにより集中的なサポートが必要になることなど、予期せぬ出来事がきっかけになることもあるでしょう。いずれにしても、介護は始まるタイミングも進み方も十人十色であり、企業側が画一的な判断で「これは介護」「これは単なる家庭の事情」と線を引くことはできません。
特に40代後半から50代にかけては、仕事の責任が重くなる時期であると同時に、育児や子どもの進学、親の体調悪化など、複数のライフイベントが重なる「人生の負荷」が高まる時期です。管理職や専門職として会社の中心を担う年代ほど、介護リスクが現実的に迫ってきます。企業の人材戦略の観点からも、ビジネスケアラーを支えることは避けて通れない経営課題だといえるでしょう。
■介護が発生する要因の例
・親の転倒による入院
・家族の認知症の症状が急に進む
・配偶者の病状悪化
・子の障がいへの対応
・兄弟姉妹やおじ、おばなど親しい親族のケア
介護の特徴の一つは、その“始まりが見えにくい”という点にあります。ドラマのように突然介護が始まる場合もありますが、むしろ現実には、「気づいたら日常の多くの時間が介護に取られていた」というケースのほうが多いのです。親が軽い転倒をした、病院の付き添いが増えた、認知症の初期症状に気がついた、家族の通院が頻度を増している……。こうした小さな変化が徐々に負担として積み重なり、その間、本人は「まだ介護のうちには入らない」と思い込んでしまう。こうして相談のタイミングがどんどん遅れ、本格的に支援が必要になったときにはすでに心身が消耗しているという現実が多くの職場で起きています。
もちろん、急激に生活が一変するケースも存在します。親の転倒や脳疾患による突然の入院、認知症の症状が急に進行すること、配偶者の病気が悪化すること、障害のある子どもにより集中的なサポートが必要になることなど、予期せぬ出来事がきっかけになることもあるでしょう。いずれにしても、介護は始まるタイミングも進み方も十人十色であり、企業側が画一的な判断で「これは介護」「これは単なる家庭の事情」と線を引くことはできません。
特に40代後半から50代にかけては、仕事の責任が重くなる時期であると同時に、育児や子どもの進学、親の体調悪化など、複数のライフイベントが重なる「人生の負荷」が高まる時期です。管理職や専門職として会社の中心を担う年代ほど、介護リスクが現実的に迫ってきます。企業の人材戦略の観点からも、ビジネスケアラーを支えることは避けて通れない経営課題だといえるでしょう。
■介護が発生する要因の例
・親の転倒による入院
・家族の認知症の症状が急に進む
・配偶者の病状悪化
・子の障がいへの対応
・兄弟姉妹やおじ、おばなど親しい親族のケア
2) 介護離職が企業にもたらす“静かな損失”
介護を理由に離職する従業員は、想像以上に多く存在します。しかし、その離職が企業にもたらす影響は、「単に1名の社員が辞めた」にとどまりません。深刻なのは、離職する多くが中堅層や管理職層であるという点です。こうした層は、業務遂行能力が高いだけでなく、社内のネットワーク、経験、判断力を備えており、代替が効きにくい存在です。彼らが抜け落ちることは、組織にとって“骨が抜けるような”影響をもたらすことがあります。
また、業務の属人化が進んでいる場合、その影響はさらに大きくなります。個人が長年担ってきた業務がブラックボックス化していて、急な不在に対応できる人がいない。後任の教育に時間がかかる。結果的に業務が遅延し、チーム全体に負担が積み重なる。そしてその負担が次の離職を生む――このような負の連鎖が起きることも珍しくありません。
介護離職の怖さは、その影響が数日・数週間ではなく、「数か月から数年」にわたって企業のパフォーマンスを蝕む点にあります。たとえ代わりの人材を採用できたとしても、中堅社員が蓄えてきた経験や人間関係は短期間では再現できません。だからこそ、企業は“介護離職を出さない仕組み”を持つことが、人的資本管理の中核に据えるべき重要テーマなのです。
■介護離職が生む企業にとっての主なダメージ
・即戦力人材の喪失
・担当業務の停滞・遅延
・他の社員への負担集中
・ノウハウの喪失(特に属人化業務)
・採用・育成コストの再発生
・チーム全体の士気低下
また、業務の属人化が進んでいる場合、その影響はさらに大きくなります。個人が長年担ってきた業務がブラックボックス化していて、急な不在に対応できる人がいない。後任の教育に時間がかかる。結果的に業務が遅延し、チーム全体に負担が積み重なる。そしてその負担が次の離職を生む――このような負の連鎖が起きることも珍しくありません。
介護離職の怖さは、その影響が数日・数週間ではなく、「数か月から数年」にわたって企業のパフォーマンスを蝕む点にあります。たとえ代わりの人材を採用できたとしても、中堅社員が蓄えてきた経験や人間関係は短期間では再現できません。だからこそ、企業は“介護離職を出さない仕組み”を持つことが、人的資本管理の中核に据えるべき重要テーマなのです。
■介護離職が生む企業にとっての主なダメージ
・即戦力人材の喪失
・担当業務の停滞・遅延
・他の社員への負担集中
・ノウハウの喪失(特に属人化業務)
・採用・育成コストの再発生
・チーム全体の士気低下
3) 従業員が抱える「介護の不安」は、企業が思う以上に深い

介護に直面した従業員は、健康面・精神面・時間面の三つの側面で負荷が増大します。特に大きいのは、先が読めないことによる精神的な不安です。「いつ終わるかわからない」「悪化するかもしれない」「家族ともうまく役割分担できない」「仕事を休むたびに申し訳ない」。こうした感情が積み重なり、本人は誰にも言えずに抱え込んでしまいがちです。
介護保険制度や地域の相談窓口がどこにあるのかといった“制度面の知識不足”も、大きなつまずきポイントです。多くの従業員は介護に直面するまで、行政サービスや要介護認定の手続きについて理解しているわけではありません。何から始めればよいかわからず、焦りと混乱の中で仕事への集中力を欠き、結果としてパフォーマンスが落ちていきます。
さらに職場における心理的な抵抗も無視できません。「迷惑をかけたくない」「評価に影響するのではないか」「制度を使うのは周りに悪い」という感情は、介護者に共通して見られるものです。こうした感情が強いほど、相談は遅れ、気づいた頃には心身が限界に達してしまいます。
このように、介護に直面した従業員は、制度・感情・家庭事情と複数の不安を同時に抱えることになります。人事労務担当者がその状況を理解し、適切な支援につなげることが極めて重要です。
■介護が生じている従業員が抱える不安
・どこに相談すればよいかわからない
・介護保険制度の仕組みが理解できない
・家族とうまく役割分担が機能しない
・家族の認知症・病状の変化にどう向き合えばよいかわからない
・職場に迷惑をかけている気がする
・評価が下がるのではないかという不安
・突発的な対応が多く、予定が読めない
・周囲に相談できる相手がいない
介護保険制度や地域の相談窓口がどこにあるのかといった“制度面の知識不足”も、大きなつまずきポイントです。多くの従業員は介護に直面するまで、行政サービスや要介護認定の手続きについて理解しているわけではありません。何から始めればよいかわからず、焦りと混乱の中で仕事への集中力を欠き、結果としてパフォーマンスが落ちていきます。
さらに職場における心理的な抵抗も無視できません。「迷惑をかけたくない」「評価に影響するのではないか」「制度を使うのは周りに悪い」という感情は、介護者に共通して見られるものです。こうした感情が強いほど、相談は遅れ、気づいた頃には心身が限界に達してしまいます。
このように、介護に直面した従業員は、制度・感情・家庭事情と複数の不安を同時に抱えることになります。人事労務担当者がその状況を理解し、適切な支援につなげることが極めて重要です。
■介護が生じている従業員が抱える不安
・どこに相談すればよいかわからない
・介護保険制度の仕組みが理解できない
・家族とうまく役割分担が機能しない
・家族の認知症・病状の変化にどう向き合えばよいかわからない
・職場に迷惑をかけている気がする
・評価が下がるのではないかという不安
・突発的な対応が多く、予定が読めない
・周囲に相談できる相手がいない
4) 企業が整備しておくべき制度――“存在するだけ”では不十分

介護と仕事を両立するための制度は、法律で細かく定められています。介護休業、介護休暇、残業免除、時短勤務、時間外労働・深夜労働の制限、40歳以上への情報提供義務、個別周知と意向確認、不利益取扱いの禁止、ケアハラスメント防止措置……。多くの制度が企業には義務づけられており、さらに「努力義務」としてテレワーク導入や相談窓口設置なども求められています。
しかし実際には、制度があっても従業員に知られていなかったり、運用が曖昧だったり、就業規則に明記されていないために相談しづらい状態になっている企業が少なくありません。制度を整備するだけではなく、“必要なときに使える状態になっているか”が最も重要です。
そのためには、制度をわかりやすく周知し、いつ誰がどのように申請するのか明確にしておく必要があります。また、介護が始まった従業員に対しては、法律で定められている「個別周知と意向確認」を丁寧に行い、会社としてできる支援を一つひとつ確認していく姿勢が求められます。
■企業が整備すべき主な制度・義務
・介護休業(最大93日)
・介護休暇(年5〜10日、時間単位取得可)
・残業免除の申出制度
・時間外・深夜労働の制限申出制度
・短時間勤務・時差出勤・フレックス等、就労と家庭を両立するための制度
・介護開始時の個別周知・意向確認
・40歳前後の従業員への事前情報提供
・不利益取扱いの禁止
・ケアハラスメントの防止措置
しかし実際には、制度があっても従業員に知られていなかったり、運用が曖昧だったり、就業規則に明記されていないために相談しづらい状態になっている企業が少なくありません。制度を整備するだけではなく、“必要なときに使える状態になっているか”が最も重要です。
そのためには、制度をわかりやすく周知し、いつ誰がどのように申請するのか明確にしておく必要があります。また、介護が始まった従業員に対しては、法律で定められている「個別周知と意向確認」を丁寧に行い、会社としてできる支援を一つひとつ確認していく姿勢が求められます。
■企業が整備すべき主な制度・義務
・介護休業(最大93日)
・介護休暇(年5〜10日、時間単位取得可)
・残業免除の申出制度
・時間外・深夜労働の制限申出制度
・短時間勤務・時差出勤・フレックス等、就労と家庭を両立するための制度
・介護開始時の個別周知・意向確認
・40歳前後の従業員への事前情報提供
・不利益取扱いの禁止
・ケアハラスメントの防止措置
5) 制度を“実際に使えるもの”にする運用のポイント
制度が有効に機能するかどうかは、日々の運用で決まります。とりわけ重要なのは管理職の理解です。介護を申し出た従業員が最初に相談する相手は多くの場合、直属の上司です。この初期対応が適切でなければ、制度の利用が阻まれたり、退職を選ばざるを得なくなったりします。
管理職が “制度があることは知っている” だけでは不十分です。従業員の話を否定せずに聞くこと、業務調整をチームで行う意識を持つこと、ケアハラスメントにつながる発言を避けることなど、実務的なスキルが必要です。一方的に制度利用を勧めるのでも、逆に「今はやめたほうがいい」と抑制するのでもなく、本人の状況を丁寧に理解し、最適な働き方を一緒に考えることが求められます。
業務の属人化を予防し、誰かが突然休んでも職場が回る仕組みを日頃から整えておくことも欠かせません。マニュアル整備、情報共有の徹底、引き継ぎ可能な体制づくりなどは、介護対策に限らず組織全体の生産性向上にもつながる取り組みです。
また、職場に「相談しやすい空気」があるかどうかも制度利用を左右します。人事や管理職が「介護は誰にでも起こるもの」「相談してくれてありがとう」という姿勢を示すことで、従業員は安心して状況を共有できるようになります。小さな声かけ一つで、従業員が抱えている罪悪感や不安が大きく軽減されることもあります。
■ビジネスケアラーを支援する制度を機能させるためのポイント
・管理職に対する制度・趣旨理解およびハラスメント防止のための研修の実施
・業務の属人化の防止およびチーム内で逐次的に進捗共有が出来る仕組みの構築
・相談しやすい社内風土の醸成
・介護支援ケアプランを含めた従業員ごとの個別の状況理解と支援
管理職が “制度があることは知っている” だけでは不十分です。従業員の話を否定せずに聞くこと、業務調整をチームで行う意識を持つこと、ケアハラスメントにつながる発言を避けることなど、実務的なスキルが必要です。一方的に制度利用を勧めるのでも、逆に「今はやめたほうがいい」と抑制するのでもなく、本人の状況を丁寧に理解し、最適な働き方を一緒に考えることが求められます。
業務の属人化を予防し、誰かが突然休んでも職場が回る仕組みを日頃から整えておくことも欠かせません。マニュアル整備、情報共有の徹底、引き継ぎ可能な体制づくりなどは、介護対策に限らず組織全体の生産性向上にもつながる取り組みです。
また、職場に「相談しやすい空気」があるかどうかも制度利用を左右します。人事や管理職が「介護は誰にでも起こるもの」「相談してくれてありがとう」という姿勢を示すことで、従業員は安心して状況を共有できるようになります。小さな声かけ一つで、従業員が抱えている罪悪感や不安が大きく軽減されることもあります。
■ビジネスケアラーを支援する制度を機能させるためのポイント
・管理職に対する制度・趣旨理解およびハラスメント防止のための研修の実施
・業務の属人化の防止およびチーム内で逐次的に進捗共有が出来る仕組みの構築
・相談しやすい社内風土の醸成
・介護支援ケアプランを含めた従業員ごとの個別の状況理解と支援
6) 〈事例紹介〉若年性認知症の妻を支えながら働き続けた40男性・課長のケース

ここでは、実務で実際に見られる状況を踏まえつつ構成した、ひとつのケースをご紹介します。なお、本ケ-スはプライバシーに配慮し、複数の事例を組み合わせて再構成したものです。
製造業で働くAさん(40代後半・男性・課長級)は、専業主婦の妻と二人暮らしです。1年ほど前から、妻の体調や言動に違和感を覚えるようになり、「もの忘れが増えている」「感情の起伏が激しい」といった変化が徐々に現れていました。しかし、妻は「年のせいか、疲れているのかも」と言っており、Aさん自身も忙しさもあって深刻には捉えていませんでした。
ところが、ある日妻が家の鍵を開けられなくなって外で呆然と立ち尽くしていたことをきっかけに、Aさんは専門医を受診する決意をします。診断結果は「若年性認知症」。医師からは、「進行の速度は人によって異なるが、今後は日常生活に支障が出る可能性が高い」と説明を受けました。Aさんは現実を受け入れることができず、ショックのあまり医師の言葉がほとんど耳に入らなかったといいます。
その後の生活は、本人が思う以上に急速に変化していきました。妻は買い物に行って帰ってこられなくなることが増え、夜中に突然外出しようとすることもありました。Aさんは一晩中起きて見守る日が続き、慢性的な睡眠不足と疲労に追われるようになりました。日中も職場からの電話に怯え、「また何かあったのではないか」と落ち着いて仕事に向き合えない時間が増えていきました。
そんな生活が続いたある朝、Aさんは職場の作業中に立ち眩みを起こし、工場内の機械に頭をぶつけて一時意識消失する事態になりました。幸いすぐに意識は戻りましたが、念のために医師の診察を受けたことで労災事故として本社の人事部に報告が上がり、そこで初めて会社としてAさんの健康状態を把握するに至りました。後日改めて人事部がAさんと面談したところ初めてAさんは、妻の状態と自分が抱えている限界について打ち明けるに至りました。
人事担当者からは、地域の相談窓口や施設入所の選択肢についての情報提供が行われ、Aさんは悩みながらも地域包括支援センターへ相談に行くことになりました。後日、妻は専門の施設でケアを受けることになり、妻の安全を確保した状態でAさん自身も就労を継続することができています。
両立支援の本質は制度の数や種類ではなく、従業員が自分の状況を安心して話すことのできる職場かどうかにかかっています。介護は家庭内部の問題として語られがちですが、実際には働き方やキャリアに直結するテーマであり、従業員が声を上げられるかどうか、その最初の一歩を支える職場環境こそが、介護離職を防ぐ最大の鍵になるのです。
製造業で働くAさん(40代後半・男性・課長級)は、専業主婦の妻と二人暮らしです。1年ほど前から、妻の体調や言動に違和感を覚えるようになり、「もの忘れが増えている」「感情の起伏が激しい」といった変化が徐々に現れていました。しかし、妻は「年のせいか、疲れているのかも」と言っており、Aさん自身も忙しさもあって深刻には捉えていませんでした。
ところが、ある日妻が家の鍵を開けられなくなって外で呆然と立ち尽くしていたことをきっかけに、Aさんは専門医を受診する決意をします。診断結果は「若年性認知症」。医師からは、「進行の速度は人によって異なるが、今後は日常生活に支障が出る可能性が高い」と説明を受けました。Aさんは現実を受け入れることができず、ショックのあまり医師の言葉がほとんど耳に入らなかったといいます。
その後の生活は、本人が思う以上に急速に変化していきました。妻は買い物に行って帰ってこられなくなることが増え、夜中に突然外出しようとすることもありました。Aさんは一晩中起きて見守る日が続き、慢性的な睡眠不足と疲労に追われるようになりました。日中も職場からの電話に怯え、「また何かあったのではないか」と落ち着いて仕事に向き合えない時間が増えていきました。
そんな生活が続いたある朝、Aさんは職場の作業中に立ち眩みを起こし、工場内の機械に頭をぶつけて一時意識消失する事態になりました。幸いすぐに意識は戻りましたが、念のために医師の診察を受けたことで労災事故として本社の人事部に報告が上がり、そこで初めて会社としてAさんの健康状態を把握するに至りました。後日改めて人事部がAさんと面談したところ初めてAさんは、妻の状態と自分が抱えている限界について打ち明けるに至りました。
人事担当者からは、地域の相談窓口や施設入所の選択肢についての情報提供が行われ、Aさんは悩みながらも地域包括支援センターへ相談に行くことになりました。後日、妻は専門の施設でケアを受けることになり、妻の安全を確保した状態でAさん自身も就労を継続することができています。
両立支援の本質は制度の数や種類ではなく、従業員が自分の状況を安心して話すことのできる職場かどうかにかかっています。介護は家庭内部の問題として語られがちですが、実際には働き方やキャリアに直結するテーマであり、従業員が声を上げられるかどうか、その最初の一歩を支える職場環境こそが、介護離職を防ぐ最大の鍵になるのです。
7) 企業にとってのメリット――両立支援は“人材定着の戦略”である

両立支援を整えることは、企業にとって単なる福祉的施策ではありません。優秀な従業員の離職を防ぎ、組織の持続力を高めるための戦略そのものです。介護リスクは誰にでも起こり得るものであり、働き方の柔軟性を支える体制は採用市場において大きな魅力になります。また、業務の見える化や属人性の排除は、結果的に組織全体の効率化につながり、人的資本経営の観点からも外部評価の向上に寄与します。
職場に安心感が生まれ、従業員が互いに支え合う文化が育つことで、企業全体の心理的安全性も高まります。これは、イノベーション、エンゲージメント、生産性といった組織運営に欠かせない要素を底上げする重要な基盤です。
■ビジネスケアラーへの支援がもたらす企業へのメリット
・経験豊富な社員の離職防止、定着率の向上
・求職者に対する採用ブランドの向上
・属人化の解消によるチーム全体の生産性の改善
・人的資本経営の実践として企業の社会的価値の向上
職場に安心感が生まれ、従業員が互いに支え合う文化が育つことで、企業全体の心理的安全性も高まります。これは、イノベーション、エンゲージメント、生産性といった組織運営に欠かせない要素を底上げする重要な基盤です。
■ビジネスケアラーへの支援がもたらす企業へのメリット
・経験豊富な社員の離職防止、定着率の向上
・求職者に対する採用ブランドの向上
・属人化の解消によるチーム全体の生産性の改善
・人的資本経営の実践として企業の社会的価値の向上
8) 今日から始められる三つの第一歩

両立支援は、いきなり大規模な改革をする必要はありません。まずは「できるところから」着実に進めることが大切です。
第一に、就業規則や社内制度が最新の法令に沿っているか確認することです。とりわけ介護休業や休暇、残業免除などの制度が明確に記載されているか、人事担当者自身がすぐに説明できるかどうかが重要です。
第二に、40歳以上の従業員に対する情報提供を実施することです。これは法令上の義務であり、まだ介護に直面していない従業員に“備えの意識”を持ってもらううえで非常に有効です。
第三に、管理職研修を導入し、介護相談を適切に受け止められる人材を育成することです。現場の判断で制度利用が妨げられることのないよう、基礎知識とコミュニケーションスキルを身につけてもらう必要があります。
■ビジネスケアラー支援の3ステップ
・就業規則・制度の点検とアップデート
・40歳以上の従業員に対する介護制度に関する情報提供
・管理職に対する法的理解とコミュニケーションに関する研修の実施
第一に、就業規則や社内制度が最新の法令に沿っているか確認することです。とりわけ介護休業や休暇、残業免除などの制度が明確に記載されているか、人事担当者自身がすぐに説明できるかどうかが重要です。
第二に、40歳以上の従業員に対する情報提供を実施することです。これは法令上の義務であり、まだ介護に直面していない従業員に“備えの意識”を持ってもらううえで非常に有効です。
第三に、管理職研修を導入し、介護相談を適切に受け止められる人材を育成することです。現場の判断で制度利用が妨げられることのないよう、基礎知識とコミュニケーションスキルを身につけてもらう必要があります。
■ビジネスケアラー支援の3ステップ
・就業規則・制度の点検とアップデート
・40歳以上の従業員に対する介護制度に関する情報提供
・管理職に対する法的理解とコミュニケーションに関する研修の実施
9) まとめ――介護は突然の出来事でもあり、ゆっくり進む変化でもある

介護は「誰かがある日突然抱えるもの」であると同時に、「じわじわと家庭に入り込み、本人の余力を奪っていくもの」でもあります。その二面性を理解し、従業員がどの段階で相談しても受け止められる体制と文化があるかどうかが、企業の未来を左右します。
両立支援は、人材が不足するこれからの時代において、企業が競争力を維持するための必須戦略です。制度整備だけでなく、その制度を支える運用、管理職の理解、相談しやすい職場文化。これらを組み合わせることで、従業員は安心して働き続けることができます。
“介護は誰にでも起こり得る”という前提を持ち、企業として先回りして備えておくことが、結果的に従業員を守り、組織の力を守ることにつながるのです。
■ビジネスケアラー支援を本気で進めたい企業様へ
村井社会保険労務士事務所では、
・介護と仕事の両立支援制度の設計
・就業規則の改訂
・管理職研修
・従業員向け説明会
・運用体制の伴走支援
・助成金申請サポート
など、企業の状況に合わせて支援しています。
「まずは自社の状況を整理したい」
「制度はあるが、うまく運用できていない」
「管理職教育を強化したい」
そのような企業様は、どうぞお気軽にお問い合わせください。


両立支援は、人材が不足するこれからの時代において、企業が競争力を維持するための必須戦略です。制度整備だけでなく、その制度を支える運用、管理職の理解、相談しやすい職場文化。これらを組み合わせることで、従業員は安心して働き続けることができます。
“介護は誰にでも起こり得る”という前提を持ち、企業として先回りして備えておくことが、結果的に従業員を守り、組織の力を守ることにつながるのです。
■ビジネスケアラー支援を本気で進めたい企業様へ
村井社会保険労務士事務所では、
・介護と仕事の両立支援制度の設計
・就業規則の改訂
・管理職研修
・従業員向け説明会
・運用体制の伴走支援
・助成金申請サポート
など、企業の状況に合わせて支援しています。
「まずは自社の状況を整理したい」
「制度はあるが、うまく運用できていない」
「管理職教育を強化したい」
そのような企業様は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

