労務相談・就業規則
労務管理研修・ハラスメント対策
「アドバイス」か「ハラスメント」なのか、客観的な線引きが難しい事例の対応策
地方金融機関で、50代の上司が20代社員にハラスメントだと訴えられるということがおこりました。
ヒアリングの結果を踏まえ、50代の上司と若手社員との間で、『どこからは組織の一員としてよくない行動だ』という線引きがずれていたことが問題になっていることが分かりました。
そこで、この上司に個人的体験として指摘をさせるのではなくて、組織の再発防止策としてガイドラインを策定し、「ここからはうちの会社として問題視の対象にする」という線引きを明確にしておくことをご提案しました。
ガイドラインの策定には、作成委員を公募し、プロジェクトチームは20代から50代まで、役職も様々なメンバーがそろい、組織の健全な風土を守ることができています。
CASE STUDY 実際の事例
地方金融機関でDEI室長を勤めるT様から、社内でのハラスメントについて、ご相談がありました。
T様の勤務先である金融機関は、商圏内に数十店舗を構え、保守的で手堅い社風で知られています。
数年前に人事部の一部が分離する形でダイバーシティの推進と実効性を担保する部署がおかれ、そこにハラスメント相談室が設置されていました。
「ベテラン社員からパワハラを受けている」と新入社員が社長へメールを送り、
T様は、自分がヒアリングを行えば、バイアスをかけて聞いてしまう可能性があるからと、直接の上司である自分に代わり外部社労士の私にヒアリングを行ってほしいというものでした。
SOLUTION 当事務所によるご提案
ヒアリングの結果、ベテラン社員と若手社員との間で、『どこからは組織の一員としてよくない行動だ』という線引きがずれていたことが問題だと分かりました。
そこで、ベテラン社員の方に個人的体験として指摘をするのではなくて、組織としてのガイドラインを示すほうがよいこと、
若手社員にも策定に協力してもらえば、それぞれの考え方が分かってよいことをご提案しました。
まず、ハラスメント相談は「相談委員会」を設置し、相談員は3名配置することになりました。
これにより、相談者は相談しやすい相手を選んで相談することができるようになります。
そして、会社は、加害と感じさせる指導があったことについては反省し、再発防止策としてガイドラインを策定することにしました。
プロジェクトチームは20代から50代まで、役職も様々なメンバーがそろいました。
定めるからには合理的なものである必要がありますが、その「合理性」の判断が恣意的なものにならないよう、属性の異なる社員の意見を聞きながらルールを作成してラインを明確にしておくことが重要です。
多くの会社が服務規定を就業規則の中に定めていますが、そこに具体的な線引きまであるのは稀です。
さらに、このルールは時代の流れによって変わります。
社会のジェンダー意識やコンプライアンスに対する認識も変わり、組織においても対応を求められています。
ハラスメントはその意識のずれから生まれることも多いため、こうしたルールも常にアップデートが必要です。
一度作ったから終わりではなく、定期的に見直すことで、組織の健全な風土を守ることができるでしょう。
ハラスメントを防止していくには合理的な社内ルールを作成して周知していくなど、多様な世代や価値観のずれを考慮したコミュニケーションが求められます。
POINT 事例のポイント
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ハラスメントの事実内容をバイアスをかけずに確認しましょう。
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ハラスメント相談の担当者は、複数配置しましょう。
これにより、相談者は相談しやすい相手を選んで相談することができるようになります。
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ハラスメントを個人的体験として指摘をするのではなくて、組織の再発防止策としてガイドラインを策定しましょう。
世代間の違いから親切心が裏目に出るケースも増えつつあります。
「ここからはうちの会社として問題視の対象にする」という線引きを明確にしておくことは重要です。
現代の職場においては、ルールメイクを通して対話していくことも重要な課題です。