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【初めて人を雇う方必見】社労士が完全解説 必要な労働保険・社会保険手続一覧

【初めて人を雇う方必見】社労士が完全解説 必要な労働保険・社会保険手続一覧

初めて人を雇う際には、労働保険・雇用保険・社会保険の手続きが重要です。
個人事業主にとっても企業にとっても大きなステップで、手続きは複雑ですが、しっかり理解すれば安心して雇用ができるようになります。
それぞれの保険制度は従業員の労働環境や生活を守るために設けられたもので、事業主として正しい手続きを行う必要があります。
分かりやすく解説いたしますので、従業員が安心して働ける環境を整えていきましょう。

1)労働保険への加入

労働保険には「労災保険」と「雇用保険」が含まれます。

①労災保険

労災保険は、従業員が仕事中や通勤中に事故やケガをしたり、病気になったときに、治療費や休業補償を受けられる制度です。
正社員・パート・アルバイトに関わらず、雇った全ての従業員が対象となります。
• 手続き方法: 労働基準監督署で「労働保険関係成立届」を提出します。
• 申請場所: 労働基準監督署
• 提出期限: 従業員を雇用した日の翌日から10日以内

②雇用保険

雇用保険は、従業員が失業したときに生活をサポートする制度で、失業時に給付金を受け取ることができます。
週20時間以上働き、原則31日以上の雇用見込みがある従業員は、必ず加入が必要です。
• 手続き方法: ハローワークで「雇用保険適用事業所設置届」と「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。
• 申請場所: ハローワーク
• 提出期限: 従業員を雇用してから10日以内
• 保険料の支払い:雇用保険料は事業主と従業員の双方で負担します。

③資格取得時の保険料納付と目安金額の算出方法

労働保険には「労災保険」と「雇用保険」の2つが含まれますが、納付はまとめて行います。
労働保険料は1年ごとに計算し、毎年年度更新を行います。
■納付の手順:
• まず、初年度は、従業員を雇用した日から最初に到来する3月31日までの期間の保険料を納めます。その期間までの賃金総額を基に労働保険料を計算し、申告・納付します。
• 翌年度以降は、労働基準監督署に備えられている「労働保険 概算・確定保険料申告書」を使用して申告します。

■労働保険料の計算方法
労働保険料は以下の2つを合算して支払います。
〇労災保険料:
• 全額事業主負担となり、従業員から保険料を控除することはできません。
• 業種ごとに異なる保険料率が設定されています。
詳細は下記のリンクをご確認ください。

〇雇用保険料:
• 事業主と従業員の両方が負担します。保険料率の詳細は下記のリンクをご確認ください。
• 毎月の給与から被保険者となる従業員負担分の保険料を控除します。

■主な納付方法
労働保険料の納付は以下の方法で行えます。
〇金融機関での納付
• 銀行や信用金庫などの金融機関窓口で支払います。納付書は管轄の労働基準監督署から受け取ります。
〇労働局等での納付
• 所轄の労働局または労働基準監督署で支払うこともできます。

2)社会保険への加入

社会保険には「健康保険」と「厚生年金」が含まれます。

①健康保険

健康保険は、従業員が病気やケガをしたときに、医療費の一部をカバーする制度です。
従業員とその家族が加入できるため、安心して働いてもらえる環境が整います。
医療費の負担を軽減し、正社員だけでなく、条件を満たすパートタイマーやアルバイトも対象になります。

②厚生年金

厚生年金は、将来の年金のために、企業と従業員が一緒に積み立てる制度です。従業員が退職後に年金を受け取れるようになります。加入対象者は後述の通りです。

• 手続き: 年金事務所で「健康保険・厚生年金保険新規適用届」「健康保険被保険者資格取得届」を提出します。
• 申請場所: 年金事務所
• 提出期限: 従業員を雇用して5日以内
• 保険料の支払い:社会保険料は、事業主と従業員で半分ずつ負担します。

③社会保険適用事業所

まず、社会保険の適用事業所になるかどうかを確認しましょう。
• 法人の場合: 法人(株式会社、合同会社など)は、役員や従業員を雇用するかにかかわらず、原則として全員が社会保険に加入しなければなりません。
• 個人事業主の場合: 常時5人以上の従業員を雇っている事業所(飲食業やサービス業などの特定業種を除く)は、社会保険に加入する必要があります。

上記の適用事業所以外の事業所であっても、従業員の半数以上が社会保険の適用事業所となることに同意し、事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受けることにより適用事業所となることができます。

④社会保険加入対象者

適用事業所に常用的に使用される以下の方は、社会保険に加入が必要です。
■ 正社員
週の労働時間や労働日数が、一般の従業員と同等の正社員は、必ず社会保険に加入します。

■ パートタイマー・アルバイト
パートタイマーやアルバイトでも、事業所と常用的使用関係にある場合は、被保険者となり、
1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している通常の労働者の4分の3以上である方は対象です。
また、従業員数が51人以上の企業は、以下の条件を満たす場合に加入しなければなりません。
• 週の所定労働時間が20時間以上
• 雇用期間が2ヶ月を超える見込み
• 月額賃金が88,000円以上(年収106万円以上)
• 学生ではない

■ 役員・経営者
法人の役員(取締役など)も社会保険に加入する必要があります。ただし、非常勤の場合で定期的な出勤や役員会への参加実績がないなど一定の場合は加入することができません。

⑤保険料納付

社会保険料の納付は、事業主が毎月の給与から従業員負担分を控除し、事業主負担分と合わせて納付します。
■納付の手順:
1. 給与計算:対象となる従業員の給与から社会保険料を控除します。
2. 納付書:社会保険料納付額を計算し、毎月日本年金機構から「納付書」が送られてきます。
3. 納付期限:社会保険料は、翌月の末日までに納付する必要があります。

■社会保険料の計算方法
社会保険料は、従業員の標準報酬月額(給与の平均額)に基づいて計算され、都道府県によって保険料率が異なる場合があります。
• 健康保険料は、従業員の標準報酬月額に都道府県ごとに異なる保険料率を掛けて算出されます。
各都道府県の健康保険料額は下記のリンクからご確認ください。

• 厚生年金保険料は、全国一律の保険料率が適用されます(2024年度では18.3%)。

■主な納付方法:
• 口座振替:事前に金融機関で口座振替を設定しておくことで、自動的に保険料が引き落とされます。
• 金融機関の窓口で納付:納付書を持参して、銀行や郵便局などの窓口で納付します。

3)労働条件通知書の作成

労働基準法第15条の規定により使用者は必ず労働条件通知書を従業員に交付することが義務つけられています。
従業員が自分の労働条件を書面で確認できるため、納得・安心して働くことができるとともに、労使間のトラブルを防止することができます。
法的に正しい労働条件通知書を作成することが非常に重要です。雇用条件、業務内容、給与、労働時間、その他の権利や義務を明記しましょう。
記載方法については、下記のリンクで解説していますので、ご覧ください。

✐労働条件明示のルールが改正されました



4)36協定の締結・届出

36協定(サブロク協定)は、労働基準法第36条に基づき、企業が法定労働時間を超えて従業員に時間外労働(残業)や休日労働をさせる場合に必要となる労使間の協定です。
この協定を締結し、労働基準監督署に届け出ることで、労働基準法で定められた時間外労働や休日労働の制限を超えて、一定の範囲内で労働時間を延長できるようになります。

●36協定は、次の場合に必要です。

①法定労働時間を超える労働(時間外労働)をさせるとき

労働基準法では、1日8時間、週40時間を法定労働時間と定めています。これを超える労働をさせるためには、36協定を締結しなければなりません。

②法定休日に働かせるとき(休日労働)

法定休日(通常は週に1回)に労働をさせる場合も、36協定が必要です。
たとえば、週休2日制で土日休みの会社において日曜日が法定休日の場合に、日曜日に社員を適法に働かせるには36協定の締結が必要です。

③特別条項付き36協定が必要な場合

時間外労働には上限があり、通常の36協定では月45時間、年間360時間までとされています。しかし、業務の繁忙期などで、これを超える残業が発生する可能性がある場合は、特別条項付き36協定を結ぶことができます。
• 特別条項付き36協定では、臨時的にこれらの上限を超える残業が認められますが、以下の制限があります。
  年間720時間以内
  2〜6ヶ月の平均が月80時間以内
  月100時間未満

36協定が締結されていないのに、時間外労働や休日労働をさせることは違法となり、企業に罰則が科せられる可能性があります。そのため、残業や休日労働が想定される場合には、必ず36協定を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。

④36協定の手続きの流れ

1. 労使協定の締結   
労働者の代表(従業員の過半数を代表する者)と使用者が話し合い、協定を結びます。
2. 労働基準監督署への届出
36協定は締結後、管轄の労働基準監督署に届け出ることで効力が発生します。
3. 定期的な更新
36協定には有効期限があり、通常は1年ごとに更新が必要です。継続的に時間外労働や休日労働が発生する場合は、定期的に協定を見直し、労働基準監督署に再提出します。

5)就業規則の作成

就業規則は、チームとして同じ目的を持ち、仕事に励むことができる会社のルールです。
働く条件や手続きの方法、守ることなどを明確にし、職場環境を整えていきましょう。
労働基準法では常時10人以上の従業員がいる事業所は、就業規則の作成と届出の義務があります。
また、就業規則の作成には、従業員とのトラブル防止、法的リスクの軽減、職場のルールの統一、従業員のモチベーション向上など多くのメリットがあります。特に企業が成長する過程で、組織の一貫性を保ち、公平で安心できる職場環境を構築するために必要です。
10人未満でも就業規則を作成していきましょう。

①就業規則作成の主なメリット5つ

就業規則の作成には、企業にとって多くのメリットがあります。就業規則は、従業員との関係を明確にし、職場環境を円滑に保つための重要なツールです。法的義務に加え、企業の運営においても以下のようなメリットが期待できます。

1⃣  従業員とのトラブルを防ぐ
就業規則を作成し、労働条件や職場のルールを明文化することで、従業員と企業の間の誤解やトラブルを未然に防ぐことができます。
• 例: 労働時間、休暇、給与、懲戒処分の基準などが明確になり、従業員が自分の権利や義務を理解しやすくなります。
• トラブルの回避: 「聞いていなかった」「知らなかった」といったトラブルを防ぎ、公平な労働環境を作ることができます。

2⃣ 職場の統一されたルールを確立する
従業員が増えてくると、部門や上司によって運用がバラバラになりがちですが、就業規則を導入することで一貫したルールが全社に適用されます。
• 一貫性の向上: 全従業員に同じ基準が適用されるため、公平性や一貫性が担保され、モチベーションの低下や不満の発生を抑えられます。

3⃣ 法的なリスクを軽減する
就業規則は、労働基準法やその他の労働関連法規を反映して作成されるため、法的なリスクを軽減できます。
• 例: 残業、休暇、退職などに関するルールを明確にしておくことで、法的な問題(残業代未払い、ハラスメント対応の不備など)を防止し、会社が適法に運営できるようにします。
• コンプライアンス強化: 労働基準監督署による監査や労働者からのクレームに対して、適切に対応できる体制を整えられます。

4⃣  従業員の安心感を高め、モチベーションを向上させる
従業員にとって、労働条件や職場ルールが明確であることは、安心して働くための重要な要素です。就業規則を通じて自分の権利や義務を理解できるため、会社に対する信頼感が向上します。
• モチベーションアップ: 特に休暇制度や福利厚生が明確に示されると、従業員のモチベーションが向上し、長期的な雇用関係が築けます。

5⃣ 組織の成長に対応できる柔軟な運用が可能
企業が成長するにつれて、組織や業務の内容が変わることがあります。就業規則を定期的に見直し、更新することで、変化に柔軟に対応できる企業運営が可能になります。
• 例: テレワーク制度の導入や、働き方改革に合わせた労働時間の変更など、会社の成長や外部環境に応じたルール作りができる。



初めて人を雇うときには、さまざまな手続きがあります。そのほか、最低賃金、有給休暇、労働時間管理などに関する法律を確認することも重要なポイントです。
弊所では、スモールビジネスやスタートアップに対する労務アドバイスも積極的に行っております。ぜひ、専門家にご相談ください。

✐就業規則の改定と見直しのポイントについて社労士が解説








この記事を書いた人

太田裕子Yuko Ohta

社会保険労務士。助成金を活用しながら、女性活躍支援・生産性向上等の働き方改革のサポートが強み。安心安全な環境づくりで働く人の最高のパフォーマンスを引き出し、組織の業績を上げていく状態に導きます。

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