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問題社員の特徴と解決方法

問題社員の特徴と解決方法

問題社員にはさまざまなタイプがあり、早めの対策が重要です。放置すると、周囲の士気が下がったり、組織全体の生産性に悪影響を及ぼす可能性があります。
問題社員への対応では、就業規則の整備、証拠の記録、適切な指導・対話が鍵になります。
特に解雇を検討する場合は、解雇理由の正当性が問われるため、慎重な対応が求められます。
本稿では、トラブルを防ぎながら円滑に対応するために、それぞれのタイプの具体的事例と適した対応策を詳細に解説します。


問題社員の特徴とタイプ別対応策

実際の現場で起こりやすいケースを想定し、問題社員のタイプごとに、具体的な事例と適切な対処方法を紹介します。

勤怠不良型(遅刻・欠勤・勤務態度の問題)

・遅刻や欠勤が多い
・無断欠勤や直前の休暇申請が頻繁にある
・勤務時間中にサボる(離席が多い、スマホばかり見ている)

■事例
佐藤さん(30代)は、毎月3~4回遅刻しており、「電車が遅れた」「体調が悪い」といった理由を繰り返している。無断欠勤も2回あり、上司が電話しても出ないことがあった。自己管理の甘さが原因の可能性がある。
他の社員からは「佐藤さんばかり遅刻しても許されるのか?」とか、仕事の負担も増え、不満が出ている。
このままでは、「遅刻しても大丈夫」と甘くなり、組織全体の規律が乱れてしまう。

■対応策
✅ 初期対応(口頭注意)
 1. 遅刻・欠勤の事実を確認し、口頭で注意する。
 2. 「遅刻が続くと職場にどんな影響があるか?」を理解させる。
 3. 事情を聞き、改善策を一緒に考える(例:「電車が遅れるなら、1本早い電車で通勤する」)。
✅ 書面による警告(改善しない場合)
 ・「出勤時間の厳守」を指示し、改善計画を立てる(例:「1か月間、遅刻がゼロであること」)。
 ・警告書を交付し、本人のサインをもらう。
✅ 懲戒処分・最終警告
 ・それでも改善が見られなければ、「減給」「出勤停止」などの懲戒処分を検討。
 ・最終警告として、「次回同じことがあれば解雇も検討する」ことを伝える。

パフォーマンス不良型(能力不足・やる気なし)

・仕事の成果が極端に低い
・ミスが多い、基本的な業務ができない
・上司や同僚の指示を聞かない

■事例
高橋さん(40代)は、営業職だが、成約数が社内平均の半分以下。努力不足なのか、能力不足なのか、原因を特定する必要があり、顧客対応、営業プロセスに問題がある可能性がある。
また、上司が指導しても、報告書の提出を忘れることが多く、「すみません、忘れてました」と他人事のような態度を取り、謝るだけで改善しない。業務管理の基礎ができてなく、業績向上への危機感もなく困っている。
他の社員がフォローすることになり、業務負担が増えていて、組織全体の売上にも影響を与えている。

■対応策
✅ 具体的な目標を設定する
 1. 「3か月以内に成約数を○件達成」「報告書は毎日○時までに提出」など、数値目標を設定。
 2. 進捗を週1回チェックし、達成度を確認する。
✅ 指導記録を残す
 ・注意や指導の内容を文書にして残し、本人にも共有する。
 ・「3か月後に改善しない場合は、異動や減給の可能性がある」と伝える。
✅ 配置転換・解雇の検討(改善しない場合)
 ・営業職に適性がない場合、事務職などに配置転換を検討する。
 ・改善の見込みがなければ、解雇も視野に入れる。

協調性欠如型(ハラスメント・トラブルメーカー)

・上司や同僚と衝突が多い
・パワハラ・セクハラ・モラハラを行う
・顧客や取引先との関係を悪化させる

■事例
田中さん(50代)は部下に対して高圧的な態度を取り、「こんなこともできないのか!」と怒鳴ることが多い。部下が委縮し、積極的な意見が出なくなっていて、職場の雰囲気が悪化している。
その為、部下が相談しにくくなり、業務効率が低下している。また、モチベーション低下により、離職率が上昇する可能性がある。
パワハラ問題がエスカレートすると、訴訟リスクが発生することも危惧している。

■対応策
✅ 注意喚起・指導
 ・ハラスメント防止の研修を実施し、本人にも参加させる。
 ・上司が本人と面談し、具体的な問題行動を指摘する。
✅ 警告書の発行・懲戒処分(改善しない場合)
 ・ハラスメント行為を文書化し、「今後同様の行為があれば処分対象」と伝える。
 ・被害者の証言を集め、必要に応じて異動や降格を検討。
✅ 解雇の検討(悪質な場合)
 ・ハラスメントが重大で、改善の見込みがない場合は、就業規則に基づき懲戒解雇も検討。

ルール違反・不正行為型

・情報漏洩や会社の機密を外部に持ち出す
・経費の不正使用、金銭トラブル
・副業禁止の会社で、無許可で副業

■事例
中村さん(30代)は、会社の経費を私的に利用し、領収書を改ざんしていた。監査で発覚し、50万円の不正使用が判明。発覚しなければさらに不正が続いた可能性がある。
経費精算のチェック体制が機能していなかった可能性があり、「バレなければ大丈夫」との誤った認識を生み、他の社員へ悪影響を及ぼしている。

■対応策
✅ 事実確認と証拠収集
 ・不正が疑われる場合、領収書や経費申請の履歴を確認し、証拠を確保。
 ・本人に説明を求め、事情を聴取する(書面で記録)。
✅ 懲戒処分の適用
 ・不正額に応じ、「返還命令」「減給」「停職」などの処分を行う。
 ・悪質な場合は、「懲戒解雇」を検討。
✅ 法的措置の検討(重大な場合)
 ・会社に損害が発生している場合、損害賠償請求を行う。
 ・刑事事件に該当する場合は、警察に通報。

クレーマー・権利主張型

・労働条件や待遇に対し、頻繁にクレームをつける
・過剰な権利主張を行い、業務に支障をきたす
・労働組合を利用して対立姿勢を取る

■事例
山本さん(40代)は、「自分の給料が低すぎる」「評価が不公平だ」と頻繁に訴える。労基署への相談をほのめかし、他の社員にも「会社はブラックだ」と言い回る。
他の社員のモチベーションが下がり、頻繁に訴えられることで、上司の業務時間が奪われている。

■対応策
✅ 冷静に事実を確認する
・単なる不満か、実際に会社の制度や運用に問題があるのかを明確にする。
 ・「給料が低い」との訴えに対し、給与体系の説明を行う。
 ・評価に不満がある場合、具体的な評価基準を示す。
✅ 感情的にならず、記録を残す
 ・面談の内容を記録し、「会社として適切に対応した」証拠を残す。
 ・社内の就業規則や制度を再確認し、不備があれば改善する。
✅ 過度な要求には毅然と対応
 ・「他の社員の士気を下げる発言が続く場合、注意や処分を行う」と伝える。
 ・訴えが理不尽な場合、「会社として対応できる範囲」を明確に示す。


問題社員への対応策

問題の明確化(事実の把握)

まず、「何が問題なのか」を具体的に整理することが大切です。
✅ 客観的な事実を記録する
 ・いつ、どのような問題行動があったか(日時、内容、証拠)
 ・どの程度業務に支障をきたしているか(影響範囲)
✅ 本人の意識を確認する
 ・本人は問題を自覚しているか?
 ・何か事情があるのか?(私生活の問題、健康問題、職場環境の不満など)

初期対応(指導・注意)

問題が明らかになったら、速やかに指導・注意を行います。
✅ 非公式な指導(まずはソフトに)
 ・面談や1on1で、問題点を指摘し、改善の必要性を伝える
 ・「どうすれば改善できるか?」を本人と一緒に考える
✅ 公式な注意(文書・記録を残す)
 ・口頭での注意の効果がない場合は、正式に注意文書を交付
 ・「〇月〇日までに改善が見られない場合、次の対応を行う」と期限を明確にする

改善指導プログラム(PIP)を実施する

PIP(Performance Improvement Plan:業務改善計画)を作成し、具体的な行動目標を設定します。
✅ PIPのポイント
 ・どのような行動を改善すべきか明確にする(例:遅刻を月に1回以内にする)
 ・達成基準を設定する(「ミスを○%以下にする」「報告を毎日必ず行う」など)
 ・期限を決める(1ヶ月・3ヶ月単位が一般的)
✅ フォローアップを行う
 ・定期的に面談を行い、進捗を確認
 ・努力している場合は評価し、支援する

懲戒処分・配置転換・解雇の検討

指導しても改善が見られない場合、より強い対応を検討します。
✅ 配置転換
 ・本人の適性を考慮し、別の部署や業務へ異動させる
 ・業務内容を見直し、負担を減らすことで改善する場合も
✅ 懲戒処分(就業規則に基づいて実施)
 ・戒告、減給、出勤停止などの段階的な処分
 ・処分を行う際は、労働基準法に則った手続きを踏む
✅ 最終手段としての解雇
 ・普通解雇(能力不足、勤怠不良の場合)
 ・懲戒解雇(重大な規律違反がある場合)
 ・解雇の際は、法的リスクを十分に考慮し、社労士や弁護士と相談する

再発防止の仕組みを作る

問題社員が発生しにくい職場環境を作ることも重要です。
✅ 採用時の見極め(問題のある人を雇わない)
・適性検査を行う
(適性検査では、面接だけでは分からない応募者の特性が分かるので重要)
 ・採用面接で価値観や適性をチェックする
 ・試用期間中に適性をしっかり見極める
✅ 就業規則の整備(ルールを明確にする)
 ・問題行動に対する処分の基準を明確化
 ・ハラスメントや勤怠不良への対応策を記載
✅ 定期的なフィードバック・評価制度の導入
 ・上司と部下の定期面談を実施し、早期発見・対応
 ・モチベーションを向上させる仕組みを作る

問題社員を生まないためのアプローチ

問題社員を未然に防ぐためには、「日頃のコミュニケーション」が非常に重要です。
問題が起きてから対処するのではなく、「予防」の視点を持ち、普段から次のようなことを意識することが重要です!

1on1などのこまめな声掛け

日ごろからの1on1ミーティングやこまめな声掛け、情報共有を行うことで、以下のような効果が期待できます。

① 早期発見と未然防止・・問題が深刻化する前に気付いて対応できる
② モチベーション維持・・「見てもらえている」と感じ、やる気が上がる
③ 誤解・トラブル防止・・ 評価基準や方針を伝え、不満を防ぐ
④ 信頼関係の構築・・指導がスムーズに伝わり、反発を防ぐ
⑤ 問題行動のエスカレート防止・・小さな問題のうちに解決できる

話しかけやすい時間を必ず1日のうちに短時間でも設けること

管理職がプレイヤーであるとマネジメントにかける時間が少なくなるので、ホウレンソウタイムのように話しかけやすい時間を必ず1日のうちに短時間でも設けることが必要です。
短時間でも毎日確保することで、問題社員を生まない組織づくりができ、以下のような効果が期待できます。

① 相談しやすい環境を作れる・・部下が早めに報告・相談でき、問題を未然に防げる
② 忙しくてもマネジメントの時間を確保できる・・短時間でも継続することで、マネジメントを維持
③ 「報告がない=問題がない」の誤解を防げる・・必ず話を聞く場を作り、問題を見逃さない
④主体性が発揮される・・部下が「自分の意見が尊重されている」と感じ、主体的に行動するようになる
⑤ チームの生産性向上・・情報共有が円滑になり、ミスや手戻りが減る

まとめ

🔹 問題社員の対応は、早期の事実確認・指導・記録が重要!
🔹 対応の基本は「注意→書面での警告→懲戒処分→解雇」(段階的に進める)
🔹 感情的に対応せず、客観的な証拠を重視する
🔹 問題を未然に防ぐために、就業規則の整備と定期的な研修が必要

当所では問題社員対応に詳しい社労士が豊富な事例をもとに、相談や研修を行っております。
具体的な事例に応じて、より詳細なアドバイスを行うことができますので、ぜひ、お気軽にご相談ください。









この記事を書いた人

太田裕子Yuko Ohta

社会保険労務士。助成金を活用しながら、女性活躍支援・生産性向上等の働き方改革のサポートが強み。安心安全な環境づくりで働く人の最高のパフォーマンスを引き出し、組織の業績を上げていく状態に導きます。

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