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採用のミスマッチがハラスメントに繋がる背景と対策

採用のミスマッチがハラスメントに繋がる背景と対策

採用活動において、適切な人材を見極め、企業文化や業務内容に合う人を採用することは重要です。しかし、採用時のミスマッチが発生すると、後々の職場環境に悪影響を及ぼし、時にはハラスメントの発生原因となることがあります。本記事では、採用のミスマッチがハラスメントに繋がる背景と、その予防策について社労士が分かりやすく解説いたします。

1)採用のミスマッチとは

採用のミスマッチとは、採用された人材のスキルや価値観が、企業や職場環境、または業務内容と一致しないことを指します。例えば、以下のような状況が挙げられます:
• 候補者の業務スキルや経験が不十分で、期待される役割を果たせない。
• 候補者の価値観や働き方が企業文化と合わない。
• 仕事内容や労働条件に関する説明不足があり、入社後に「話が違う」と感じる。

2)ミスマッチがハラスメントに繋がる理由

採用時のミスマッチが職場環境でのハラスメントの要因となるケースがあります。その理由を以下に挙げます。

①上司からのプレッシャー

採用された人材が期待される成果を発揮できない場合、上司が強い指導を行う場面が増えます。当初は業務指導の範囲内だったとしても、繰り返し行われる指摘や叱責がエスカレートし、結果的にパワーハラスメントに発展することがあります。
特に、採用時にスキルや経験を過大評価してしまった場合や、業務内容を十分に伝えないまま入社に至った場合、上司側が「期待外れ」と感じやすくなる傾向があります。上司の苛立ちが指導に反映されることで、部下に過剰なプレッシャーがかかり、両者の信頼関係が損なわれる原因となるのです。

②同僚との軋轢

価値観や業務スタイルが周囲と合わない場合、同僚との関係がぎくしゃくしやすくなります。
例えば、採用された人材が職場のルールや暗黙の了解を理解できず、チームの一体感が損なわれた場合、同僚からの孤立や非難を受けることがあります。このような状況が続くと、モラルハラスメントや職場いじめの発生リスクが高まります。
さらに、他の従業員がミスマッチによる業務負担を負う場合、不満が蓄積し、トラブルが表面化することもあります。特に、チームで協働する業務では、個人の適性や働き方が周囲に与える影響は非常に大きいといえます。

③本人の不満が周囲に影響

採用時の条件や仕事内容が実際と異なる場合、採用された側が「約束と違う」と感じ、不満を抱くことがあります。この不満が業務への意欲低下や職場内でのトラブルを引き起こす要因となることもあります。
たとえば、事前に説明されていなかった残業や業務内容の変更が発生した場合、本人の中で「騙された」という感情が生まれる可能性があります。この不満が同僚や上司との対立を引き起こし、結果的にハラスメントの発生リスクを高めます。特に、条件の食い違いが明確な場合、法的トラブルに発展するケースも少なくありません。

3)ミスマッチを防ぐための採用プロセス

採用のミスマッチは、従業員の早期離職や職場トラブルの原因となり、企業の生産性や職場環境に大きな影響を及ぼします。これを防ぐためには、採用段階で企業と候補者が相互に理解を深める取り組みが重要です。以下では、具体的な対策を詳しく解説します。

①求人情報の明確化

求人情報の曖昧さは、採用時のミスマッチを招く最大の要因です。特に以下の点を正確かつ具体的に記載することが必要です。
• 職務内容
どのような業務を担当するのか、具体的なタスクや期待される成果を示します。例えば、「営業職」だけでなく、「法人営業で新規顧客の開拓を担当」や「既存顧客へのアフターフォロー中心」など詳細を記載します。
• 必要なスキルや経験
候補者に求める能力や資格を明確に記載します。「PCスキル必須」ではなく、「Excelでのデータ集計およびPowerPointでの資料作成経験必須」など、具体性を持たせます。
• 勤務条件
勤務時間、休日、残業時間の目安、給与などの条件を正確に記載します。これにより、候補者が労働環境を具体的にイメージでき、後々の「話が違う」といった問題を防ぎます。

②面接での相互理解

面接は単に候補者を評価する場ではなく、候補者に企業を理解してもらう場でもあります。そのため、以下の点に注意して進めることが大切です。
• 候補者の価値観やキャリアビジョンの確認
候補者がどのような目標を持ち、どんな職場環境を求めているのかを深くヒアリングします。「5年後にどのようなキャリアを築きたいですか?」や「理想の働き方はどのようなものですか?」といった質問を通じて、候補者の考えを引き出します。
• 業務内容や職場環境の具体的な説明
実際にどのような業務を行うのか、どのようなチームで働くのかを具体的に伝えます。業務のやりがいや課題についても率直に説明することで、入社後のギャップを防ぎます。
• 「一緒に働く姿」をイメージする
候補者が職場やチームにどのように馴染むかを想像しながら選考を進めます。たとえば、チーム内でのコミュニケーションスタイルや協調性を確認し、文化的な適合性も考慮します。

③研修や試用期間の活用

採用プロセスの一環として、研修や試用期間を有効に活用することで、候補者の適性を見極めるだけでなく、入社後の定着率を高めることができます。
• 試用期間中の適性評価
試用期間を設定することで、候補者のスキルや職場での適応性を確認する機会を持ちます。業務を進める中で、得意分野や苦手分野を把握し、必要に応じて配置転換や業務の調整を行います。
• 事前の職場見学やインターンシップ
入社前に業務や職場環境を体験できる「職場見学」や「インターンシップ」を導入するのも効果的です。これにより、候補者が実際の働き方や業務内容をより具体的に理解でき、入社後のミスマッチを防げます。
• 研修を通じたスキル習得
必要なスキルや知識を補う研修プログラムを提供することで、候補者が求められる役割にスムーズに適応できるよう支援します。研修を通じて、企業文化や価値観についても共有することができます。

4)ミスマッチが起きた場合の対応策

採用時にミスマッチが発生すると、業務の非効率や職場環境の悪化、さらにはハラスメントのリスクが高まる可能性があります。しかし、問題が判明した場合には、適切な対応を迅速に行うことで、状況を改善し、トラブルを未然に防ぐことができます。以下では、具体的な対応策を解説します。

①コミュニケーションの強化

従業員の不安や悩みを早期に把握するためには、日々のコミュニケーションを重視する必要があります。
• 定期的な面談の実施
上司が従業員と定期的に面談を行い、現状の業務状況や悩みをヒアリングします。この際、従業員が本音を話しやすい雰囲気を作ることが大切です。
例えば、「何か困っていることはないか」「業務で改善したい点はあるか」といったオープンな質問を用いることで、従業員の声を引き出せます。
• 上司への教育
上司自身が部下の特性や状況を適切に理解し、過剰な指導や無理解な対応を避けるための教育を行います。特に、部下の成果を急ぎすぎて過度なプレッシャーをかけないよう、配慮のある指導を心掛けることが重要です。

②配置転換やフォローアップ

ミスマッチが業務内容や適性に関する問題である場合、配置転換やフォローアップを検討することが効果的です。
• 適性に合った配置転換
現在の業務が本人のスキルや志向に合わない場合、他の部署や職種への異動を検討します。これにより、従業員が持つ強みを活かせる環境を提供し、パフォーマンス向上を図ります。
• 研修の提供
必要なスキルが不足している場合は、業務に直結する研修プログラムを用意します。たとえば、技術的なスキル向上を目的としたトレーニングや、コミュニケーション能力を高めるセミナーなどが有効です。従業員が「成長できている」と実感することが、モチベーション向上に繋がります。

③社内のハラスメント防止対策の徹底

ミスマッチによるストレスや不満が、職場内でハラスメントに発展しないよう、事前の防止策を強化することも重要です。
• 全従業員への教育
ハラスメントの定義や事例、対処法について社員全員に周知し、職場内での適切なコミュニケーションを促します。また、研修やセミナーを通じて、誰もがハラスメントのリスクを正しく理解できるようにします。
• 相談窓口の整備
ハラスメントの被害や職場の問題を気軽に相談できる窓口を社内に設置します。相談者のプライバシーを守りつつ、迅速かつ適切に対応する体制を整えることで、従業員が安心して問題を共有できる環境を構築します。

5)まとめ

採用のミスマッチは、本人だけでなく職場全体に影響を及ぼし、最悪の場合ハラスメントに発展することがあります。
そのため、採用プロセスの段階でミスマッチを防ぐ仕組みを整えることが重要です。
また、万が一ミスマッチが発生した場合でも、適切な対応を取ることで職場環境の悪化を防ぐことができます。
採用は単なる人材確保ではなく、長期的な信頼関係を築くための第一歩であることを忘れずに進めることが重要です。
全員が安心して働ける職場を実現しましょう。

弊所では、採用支援や、ハラスメントに詳しい社労士が豊富な事例をもとに、相談や研修を行っております。
ぜひお気軽にご相談ください。




この記事を書いた人

太田裕子Yuko Ohta

社会保険労務士。助成金を活用しながら、女性活躍支援・生産性向上等の働き方改革のサポートが強み。安心安全な環境づくりで働く人の最高のパフォーマンスを引き出し、組織の業績を上げていく状態に導きます。

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