インターンシップは「学生にとっての職業体験」であると同時に、企業にとっても「未来の人材との出会いの場」です。しかし、制度の設計や運用を誤ると重大なリスクを招きかねません。本記事では、企業がインターンシップを安心して運用するためのポイントを、社会保険労務士の視点から整理します。
1)なぜ今、インターンシップが見直されているのか

若年層の早期離職や「思っていた仕事と違った」というミスマッチは、企業にとっても学生にとっても大きな課題です。令和3年度の厚労省調査によると就職後3年以内の離職率は大卒で約34%、高卒で約38%にのぼります。
こうした背景から、インターンシップを取り入れる企業は増加傾向にあります。
ある調査では、新卒採用募集を行った企業のうち、48.4%が学生を対象にしたインターンシップを実施しています。しかしながら、インターンシップ制度は企業ごとにあいまいな運用がなされている現実や、そのために労使双方に誤解やトラブルが起きている現状もあります。
インターンシップ自体には学生のキャリア形成支援と企業との相互理解というメリットもあるため、上記のような現状を整理しつつ、適切に運用できるように定められたのが文部科学省・厚生労働省・経済産業省の3省が2022年にまとめた「インターンシップの基本的考え方」の改訂版です。
現在、各企業はこの「基本的考え方」に定められた明確なルールと透明性のもと、インターンシップ制度を運営することが求められています。
こうした背景から、インターンシップを取り入れる企業は増加傾向にあります。
ある調査では、新卒採用募集を行った企業のうち、48.4%が学生を対象にしたインターンシップを実施しています。しかしながら、インターンシップ制度は企業ごとにあいまいな運用がなされている現実や、そのために労使双方に誤解やトラブルが起きている現状もあります。
インターンシップ自体には学生のキャリア形成支援と企業との相互理解というメリットもあるため、上記のような現状を整理しつつ、適切に運用できるように定められたのが文部科学省・厚生労働省・経済産業省の3省が2022年にまとめた「インターンシップの基本的考え方」の改訂版です。
現在、各企業はこの「基本的考え方」に定められた明確なルールと透明性のもと、インターンシップ制度を運営することが求められています。
(出典:新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)を公表します|厚生労働省)
(出典:日本商工「人手不足の状況および新卒採用・インターンシップの実施状況に関する調査」の調査結果について|東京商工会議所)
(参考:インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る 取組の推進に当たっての基本的考え方|文部科学省・厚生労働省・経済産業省)
2)制度の全体像 ―4つのタイプに整理された新インターンシップ

2022年の見直しでは、学生のキャリア形成支援を上の4タイプに分類しています。
2025年3月に卒業・修了する学生(学部生ならば令和2023年度に学部3年生に進学する学生)が、2023年度に参加するインターンシップから適用されますので、現在「インターンシップ」と名乗れるのはタイプ③と④のみになっています。また、タイプ③・④では、一定の条件を満たすことで、インターン中に得た学生情報を採用活動(6月以降)に活用可能となります。
これにより、採用・教育の双方においてインターンシップの位置づけがより実務的なものになりました。
なお、本「基本的考え方」の適用により、単なる会社説明会や1DAYイベントは、今後「インターンシップ」とは呼ぶことができないことに留意しましょう。
2025年3月に卒業・修了する学生(学部生ならば令和2023年度に学部3年生に進学する学生)が、2023年度に参加するインターンシップから適用されますので、現在「インターンシップ」と名乗れるのはタイプ③と④のみになっています。また、タイプ③・④では、一定の条件を満たすことで、インターン中に得た学生情報を採用活動(6月以降)に活用可能となります。
これにより、採用・教育の双方においてインターンシップの位置づけがより実務的なものになりました。
なお、本「基本的考え方」の適用により、単なる会社説明会や1DAYイベントは、今後「インターンシップ」とは呼ぶことができないことに留意しましょう。
3)労働関係法令とインターン

学生であっても、企業との間に「使用従属関係」があれば、労働基準法上の労働者とみなされます。労働者性の判断のポイントは以下のとおりです。
・業務上の指揮命令があるか
・出退勤時刻や勤務時間を企業が管理しているか
・業務成果が企業の利益に帰属するか
・手当や報酬が労務の対価として支払われているか
これらが揃えば、募集要項上は「無償インターン」と書かれていても、実態として賃金支払義務が生じる可能性があります。
・業務上の指揮命令があるか
・出退勤時刻や勤務時間を企業が管理しているか
・業務成果が企業の利益に帰属するか
・手当や報酬が労務の対価として支払われているか
これらが揃えば、募集要項上は「無償インターン」と書かれていても、実態として賃金支払義務が生じる可能性があります。
4)実際の事例から見るインターンシップと企業トラブル

ここからは実際にインターンと企業の間に生じたトラブルについて、実際の事件をもとに概観します。
ヒューマントラスト事件【東京地裁平成20年3月26日】
人材派遣会社が行った「1日インターン兼選考研修」で、学生が無給労働を主張して争いになった事件です。争点は採用選考を兼ねた研修日が「労働時間」に該当するかというものでした。裁判所は「選考過程の一環であり、労働契約は成立していない」と判断し、インターン学生の労働者性は否定され、賃金請求は棄却されました。
インターン中のハラスメント事件(大手電機メーカー・2025年)
この事件は大手IT企業の社員が、インターンとして参加していた女子学生に対して性的暴行を行い逮捕された事件として報道されたものです。刑事事件として処理されたものの、企業には指導監督上の安全配慮義務が問われ、再発防止体制の不備が社会的批判を招きました。企業は社員が逮捕されたことを受け、懲戒解雇を行ったのち謝罪し、再発防止策を表明しています。
令和5年度の厚生労働省の調査によれば、「インターンシップ中にセクハラを経験した人」は30.1%存在し、その主な内容については、「性的な冗談やからかい」(38.2%)、「食事やデートへの執拗な誘い」(35.1%)、「不必要な身体への接触」(27.2%)と続きます。
こうした現状を改善すべく、2025年6月に男女雇用機会均等法が改正され、就活生を含む求職者に対するセクハラの防止が事業主に義務づけられることとなりました。
ヒューマントラスト事件【東京地裁平成20年3月26日】
人材派遣会社が行った「1日インターン兼選考研修」で、学生が無給労働を主張して争いになった事件です。争点は採用選考を兼ねた研修日が「労働時間」に該当するかというものでした。裁判所は「選考過程の一環であり、労働契約は成立していない」と判断し、インターン学生の労働者性は否定され、賃金請求は棄却されました。
インターン中のハラスメント事件(大手電機メーカー・2025年)
この事件は大手IT企業の社員が、インターンとして参加していた女子学生に対して性的暴行を行い逮捕された事件として報道されたものです。刑事事件として処理されたものの、企業には指導監督上の安全配慮義務が問われ、再発防止体制の不備が社会的批判を招きました。企業は社員が逮捕されたことを受け、懲戒解雇を行ったのち謝罪し、再発防止策を表明しています。
令和5年度の厚生労働省の調査によれば、「インターンシップ中にセクハラを経験した人」は30.1%存在し、その主な内容については、「性的な冗談やからかい」(38.2%)、「食事やデートへの執拗な誘い」(35.1%)、「不必要な身体への接触」(27.2%)と続きます。
こうした現状を改善すべく、2025年6月に男女雇用機会均等法が改正され、就活生を含む求職者に対するセクハラの防止が事業主に義務づけられることとなりました。
5)賃金支払義務と最低賃金の適用
インターン生が労働者に該当する場合、最低賃金法第4条により、地域別最低賃金以上の支払いが義務づけられます。 「見学」「体験」として無償にしていても、 実際に生産活動に従事していた場合、契約書上の“無報酬”は無効となりますので注意してください。
また、参加が実質的に強制される内定者研修などは「入社前労働」と判断されることもあります。 「自主参加」と「強制参加」の違いを、文書や説明会で明確にしておくことが大切です。
また、参加が実質的に強制される内定者研修などは「入社前労働」と判断されることもあります。 「自主参加」と「強制参加」の違いを、文書や説明会で明確にしておくことが大切です。
6)採用活動との関係 ―「情報利用」と「公平性」の線引き

タイプ③・④のインターンでは、要件を満たせば学生情報を採用活動に活用できます。
ただし、以下の5要件をすべて満たす必要があります。
1.実施期間の半分以上が就業体験
2.社員による指導・フィードバック
3.実施期間:汎用型5日以上/専門型2週間以上
4.長期休暇期間中に実施
5.募集要項で情報活用を明示
さらに、採用の早期化や特定校優遇につながらないよう、インターンで得られた学生情報がどのように採用活動へ活用されているのかなど透明性の確保が求められます。
前掲の条件に満たない場合やインターン参加の有無が採用結果に直結しない場合は、きちんその旨を学生にも明示しておきましょう。
ただし、以下の5要件をすべて満たす必要があります。
1.実施期間の半分以上が就業体験
2.社員による指導・フィードバック
3.実施期間:汎用型5日以上/専門型2週間以上
4.長期休暇期間中に実施
5.募集要項で情報活用を明示
さらに、採用の早期化や特定校優遇につながらないよう、インターンで得られた学生情報がどのように採用活動へ活用されているのかなど透明性の確保が求められます。
前掲の条件に満たない場合やインターン参加の有無が採用結果に直結しない場合は、きちんその旨を学生にも明示しておきましょう。
7)ハラスメント・安全配慮義務の再確認
インターン生へのハラスメント対応は、今後ますます厳しく問われます。
雇用関係がなくても、企業には社会的責任があるとする考え方が一般化しています。前述の通り、インターン生を含む就活生、求職者に対するセクハラの防止措置が企業に義務付けられることとなり、2026年中には施行される見込みです。
セクハラだけではなく、現在求職者に関する様々なハラスメントが社会的に問題視されています。インターン生に対し人格を否定するような言動を行ったり、内定をちらつかせて威圧するようなパワー・ハラスメント(パワハラ)や、内々定と引き換えに他社への就職活動を取りやめるよう強要する「就活終われハラスメント(おわハラ)」などはれっきとした人権侵害であり、許されるものではありません。
指導社員の態度や言動が原因でインターン生が被害を受けた場合、企業は「指導・監督上の過失」として民事上の損害賠償責任を負うおそれがあります。
受入担当者へのハラスメント研修の実施や相談窓口・誓約書の整備、SNS等による炎上リスクを踏まえた危機管理など、今一度インターン受け入れにあたって自社の体制を見直すとよいでしょう。
雇用関係がなくても、企業には社会的責任があるとする考え方が一般化しています。前述の通り、インターン生を含む就活生、求職者に対するセクハラの防止措置が企業に義務付けられることとなり、2026年中には施行される見込みです。
セクハラだけではなく、現在求職者に関する様々なハラスメントが社会的に問題視されています。インターン生に対し人格を否定するような言動を行ったり、内定をちらつかせて威圧するようなパワー・ハラスメント(パワハラ)や、内々定と引き換えに他社への就職活動を取りやめるよう強要する「就活終われハラスメント(おわハラ)」などはれっきとした人権侵害であり、許されるものではありません。
指導社員の態度や言動が原因でインターン生が被害を受けた場合、企業は「指導・監督上の過失」として民事上の損害賠償責任を負うおそれがあります。
受入担当者へのハラスメント研修の実施や相談窓口・誓約書の整備、SNS等による炎上リスクを踏まえた危機管理など、今一度インターン受け入れにあたって自社の体制を見直すとよいでしょう。
8)村井社会保険労務士事務所のハラスメント対策
当事務所では、企業の皆さまがインターン受入れや日常の職場運営を安心して行えるよう、
ハラスメントの未然防止と実効性ある対応体制の構築を目的に、次のようなサポートをご提供しています。
▶ 経営層・人事との密な連携
経営者・人事ご担当者と定期的に打合せを行い、メール・チャットツールを通じて迅速な情報共有と意思決定をサポートします。
▶ 「ハラスメント未満」の段階から相談対応
「違和感はあるけど、まだトラブルとは言えない」――そんな初期段階から、会社側の立場で丁寧にヒアリングし、適切な初期対応をご提案します。
▶ 規程・相談体制の整備支援
就業規則や相談窓口体制、報告フローなど、実際に機能する制度設計をサポートします。
形式だけの規程整備にとどまらず、**“運用できる仕組み”**を重視しています。
▶ ハラスメント研修の企画・実施
管理職・一般職を横断した「認識のずれを防ぐ」研修プログラムを設計。
業界特性や企業規模に合わせ、当事者意識を高めるカスタマイズも可能です。
▶ 柔軟な契約形態
月額顧問契約はもちろん、スポットでのご依頼(規程改定・社内研修・相談対応など)にも対応しております。
ハラスメントの未然防止と実効性ある対応体制の構築を目的に、次のようなサポートをご提供しています。
▶ 経営層・人事との密な連携
経営者・人事ご担当者と定期的に打合せを行い、メール・チャットツールを通じて迅速な情報共有と意思決定をサポートします。
▶ 「ハラスメント未満」の段階から相談対応
「違和感はあるけど、まだトラブルとは言えない」――そんな初期段階から、会社側の立場で丁寧にヒアリングし、適切な初期対応をご提案します。
▶ 規程・相談体制の整備支援
就業規則や相談窓口体制、報告フローなど、実際に機能する制度設計をサポートします。
形式だけの規程整備にとどまらず、**“運用できる仕組み”**を重視しています。
▶ ハラスメント研修の企画・実施
管理職・一般職を横断した「認識のずれを防ぐ」研修プログラムを設計。
業界特性や企業規模に合わせ、当事者意識を高めるカスタマイズも可能です。
▶ 柔軟な契約形態
月額顧問契約はもちろん、スポットでのご依頼(規程改定・社内研修・相談対応など)にも対応しております。
9)法律遵守の先に「人に選ばれる」組織がある
